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埼玉・三郷で 増え続ける放射性焼却灰、業者も敬遠で行き場なく (埼玉新聞) 埼玉県下水処理施設に4000トンの山

2013-02-10 22:20:22

シートで覆われた放射性物質汚染焼却灰の山。下水処理の過程で発生する汚泥により、日ごとに増えていく=三郷市番匠免の中川水循環センター
シートで覆われた放射性物質汚染焼却灰の山。下水処理の過程で発生する汚泥により、日ごとに増えていく=三郷市番匠免の中川水循環センター
シートで覆われた放射性物質汚染焼却灰の山。下水処理の過程で発生する汚泥により、日ごとに増えていく=三郷市番匠免の中川水循環センター


3日で一つずつ増えていく放射性セシウムを含む焼却灰の山―。埼玉県東部11市4町の下水処理を担う埼玉県中川下水道事務所(三郷市番匠免)敷地内には約4千トンの汚染焼却灰が保管され、今も増え続けている。国の責任で処理する「指定廃棄物」の基準(1キログラム当たり8千ベクレル以上)に満たない焼却灰で、同事務所は「原料に使うセメント業者も、最終処分場も引き取ってくれない」と途方に暮れる。中川を含む県営五つの水循環センターが抱える汚染焼却灰は現在約1万トン。行き場も削減策もなく“宙ぶらりん”の状態だ。

濃度は下がっても…

「セメント処理が可能な国の目安は1キログラム当たり100ベクレル以下。しかし、業者は放射性物質を含むだけで難色を示すのが現実。最終処分場とも交渉はしているが…」。同事務所の林純央担当課長は保管量の多さに困惑を隠さない。放射性焼却灰の処理方法は(1)セメント原料(2)処分場で埋め立て処理―の大きく分けて2通りがあるが、いずれも打開の決め手にはならない。

家庭の台所やトイレ、工場から出る下水を処理した後に残る汚泥。重さを30分の1に圧縮するため、加熱処理したのが焼却灰だ。そのセシウム濃度は福島第1原発事故直後に8千~3千ベクレルの高数値だったが最近は800~300ベクレルに低下している。

しかし、取り巻く環境は変わらなかった。同センターは0・55トンずつ耐候性の袋に詰め屋根の下に保管していたが場所が足りず、1年ほど前からはシートで覆って屋外で保管を始めた。これが幅7メートル、奥行き6メートル、高さ2・5メートルの“シートの山”の正体だ。一つの山は50袋で25トン。1日約10トン発生する焼却灰2~3日の量に相当。屋外だけで2200トン、山は80を超えた。

市町村は「保管なし」

県下水道管理課によると、震災から間もなく2年だが、下水から放射性セシウムは検出され続けている。県が管理する9水循環センターのうち、汚泥を燃焼処理できるのは、荒川(戸田市)▽元荒川(桶川市)▽新河岸川(和光市)▽古利根川(久喜市)に中川を加えた計5施設。中川のセンターがこれまで県外の最終処分場で処分できた焼却灰は千トン強。他の4施設も処分が追い付かないため、県の保管量は「横ばいか微増」から抜け出せない。

しかし、県内に18ある市町村の下水処理場は状況が異なる。例えば飯能市浄化センターなどの保管汚泥はゼロ。坂戸・鶴ケ島下水道組合は「セメント業者は100ベクレル以上でも引き取ってくれる。さらに12月末以降、放射性物質は『不検出』になった」。

一体、何が違うのか?

市町村の処理場は焼却せず汚泥のまま処分するが、県施設は焼却してやっと保管している状態。加熱しても放射性物質は減らないため、むしろ濃度は汚泥より高くなる。市町村に比べ県は取扱量が多いのも処分経路開拓の足かせになっているようだ。

保管も拡散防止に有効

下水ばかりではない。放射性物質は、水道水をつくる県浄水場でも増え続けている。河川の水の濁りを除去し、消毒する過程で生じる「浄水発生土」は現在、県営5浄水場で計7万2千トンに膨れ上がった。県水道管理課は「有機物質が少ない浄水発生土は焼却できず、保管場所も限界に近い」と、一層深刻だ。

日々増える焼却灰や浄水発生土。放射性物質に詳しい埼玉大学大学院理工学研究科の永沢明教授は「処分が追い付かないのであれば(保管施設の)敷地と民家の境界濃度に注意しながら保管をするのが、放射性物質の拡散を防ぐ最善策。数百ベクレルは人体に影響のないレベル。必要以上に構えるより、時間とともに濃度が下がり、遮断しやすいセシウムの性質をもっと周知すべき」と指摘する。

 

http://www.saitama-np.co.jp/news02/10/04.html