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「報道で絶望する村民の事を考えて欲しい」福島県飯舘村長が訴える (BLOGOS)

2013-03-08 14:12:57

飯館村の菅野村長
飯館村の菅野村長
飯館村の菅野村長


福島第1原発事故で6000人の村民が全員避難生活を余儀なくされている、福島県飯舘村の菅野典雄村長が有楽町の日本外国特派員協会で会見を開いた。1700世帯だった村が避難生活により3100世帯になるなど村がバラバラになり、放射能への考え方を巡って離婚する家庭も出てきているという。WHO(世界保健機関)の報道姿勢や東京電力の賠償対応を強く批判した。【BLOGOS編集部 田野幸伸】

放射能災害は「ゼロへのスタート」


 

菅野:飯舘村は人口6000人、牛3000頭の畜産の村だった。全村非難のときは放射能のリスクと生活の変化のリスクで悩んだ。住民は体も心も避難生活で疲弊している。

日本は世界一安全な国で、生まれてきて良かったと思っていたが、今は危ない国になってきてしまった。

避難生活に追われる毎日で、原発事故に何を学ばなければいけないのかを忘れがちになっている。経済発展は大事だが、効率やスピードやお金がすべてではない。それを原発事故から学んで欲しい。何か一つでも次の世代のためになっていると思えば、避難生活も頑張れる。

 

放射能事故は他の災害とは全く違う。普通、災害が起きれば、人は心を一つにして復興に向けて頑張る。しかし、放射能は人それぞれ怖がり方も感じ方も違う。子ども、お年寄りでは影響も違うし、線量の高い地域、低い地域で賠償額も違う。考え方の違いで離婚する家庭も出てきている。もう村には戻らないという人も3割いる。そういう状況と向き合うんです。

 

科学者によって言う事も違う。100ミリシーベルト以下は大丈夫という人。1ミリ以下にしないと危険という人。正しく放射能を怖がる事が大切。他の地域は(除染目標)1ミリシーベルト以下の基準だが、飯舘村は5ミリにした。そうしないと何十年も村に帰れない。それでもいいんですかと、村民には話しました。

 

普通の災害は「ゼロからのスタート」ですが、放射能災害は「ゼロへのスタート」なんです。


東電は責任を感じているのか


 

Q:東京電力による賠償状況は?

菅野:お金はいいから元に戻してほしいという思いですが、不可能なので賠償を求めるしかない。

土地と建物の賠償が進んでおりません。東電は登記をしていないとダメだと、頑として聞きません。農村は登記をしていない人もいるんです、登記しているのが親だったりおじいちゃんの名前のままの人も。かなり多くの人の生活を変えてしまった責任を感じていれば、登記どうこうとは言えないはず。
東京電力とは何度も話しているが、あまりにも危機感のなさ、関東地方の経済を支えているんだという驕り、心底改善していない。またこういう事故が起きるのではないか。


報道で住人がどれだけ絶望するか


 

Q:事故から全村避難まで1ヶ月間、高い線量下にいましたが、健康被害はありませんか?

菅野:原発事故が起きてから、しばらく村の中にいた。子供や、お年寄りを逃がしたりはしたが、牛の世話などもあり、だいぶ長くいた。住民の検査態勢を整えるのが、村の責任、ホールボディカウンターも自前で買って、甲状腺の検査をした。検査態勢は続けていく。むしろ「心」のほうが心配。

WHOが心無い報道をしている。ありえない数値を出し「放射能に汚染したものを食べ続けたどうしようもない村だ」と言われても納得いかない。何かあったときに「指摘してたでしょ」と言うための保身の報道だと思っている。

 

事故後、報道機関との戦いも大きかった。ウソをつけとは言いませんが、センセーショナルな報道により住人がどれだけ絶望するのか考えて報道してほしい。

http://blogos.com/article/57615/