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環境省発表の福島県の甲状腺検査は「欠陥調査」、 WHOが警告した1歳未満幼児は対象外(FGW)

2013-03-09 13:03:51

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fukushima_036環境省は8日、東京電力福島第1原発事故による福島県の子供の甲状腺への影響を調べる調査結果を発表した。福島県との対照地域として長崎など3県の子供を調べたところ、福島県よりむしろ影響が若干多く出るなど、「福島に限って特異な影響は出ていない」(環境省)との結論を得ている。ただ、実は同調査は、にWHO(世界保健機構)調査で甲状腺がん発症率が他地域よりも7割も高かった1歳児未満幼児などは対象外としており、調査の恣意性がクローズアップされた形だ。

環境省が福島原発による同県下の子供の影響度を調べるため、対照地域として、原発事故の影響が小さく、検査体制が整っている青森県弘前市、甲府市、長崎市の3~18歳の4365人を調べた。これらの対象者から、5ミリ以下の結節(しこり)や20ミリ以下の嚢胞(のうほう)が見つかったの事例は56.6%に当たる2469人。「2次検査が必要」とされたのは1%で、残る42.4%は何も見つからなかった。


 一方、福島県では事故後、18歳以下の約36万人を対象に甲状腺検査を実施した。このうちこれまでに、結果が出た約13万3千人のうち3人が甲状腺がんと確定、約41%に小さなしこりなどが見つかった。比較すると、福島県よりも対象地域3県の子どものほうが、しこり等の発見率が高かったことになる。この点について 環境省は、3県の調査では、しこりなどができにくいとされる0~2歳児が対象になっていないことを認めている。

先に発表されたWHO調査では、福島県浪江町の一歳児女子が生涯に甲状腺がんにかかる確率は1・29%で、日本の平均的な1歳女児の発がんリスクの約1・7倍だったことがわかっている。明らかに原発事故の影響が幼児の健康に有意の影響を及ぼしたことが示された。甲状腺がん以外の全般的な発がんの可能性も、1歳未満女児の場合、平均に比べて4%高い。また乳がんの可能性は、同女児で6%上昇、白血病は1歳未満男児で7%増と、いずれも明確に平均よりも有意の変化が出ている。

ところが、環境省調査では対照の3県については、そもそも0~2歳幼児が対象になっていないという基本的な欠陥調査である。調査の設計段階からミスがあったと言わざるを得ない。原発事故を引き起こした当事国の日本で、子供の健康影響を極力低く見積もろうと意図的に、影響の出やすい0~2歳児を除外したのでは、との疑念もある。何のための調査か、誰を説得するための調査か。全く不明の調査と言わざるを得ない。またこの調査を報道したマスメディアも、環境省の発表を丸呑みした記事が多いように見受けられる。原発事故から丸2年もたっているのに、こうした欠陥調査しかできない政府を、メディアはもっと真剣に問い詰めるべきではないか。(FGW)