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福島第一原発で相次ぐおかしな「事象」と経産省、規制委員会の責任 (古賀ブログ)経産官僚の言いなりの茂木大臣

2013-04-12 21:17:03

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4月5日(先週金曜日)の報道ステーションに金曜コメンテーターとして出演した際、東電福島第一原発の相次ぐ使用済み核燃料プールの冷却停止事故と原発に関する国会審議についてコメントした。ポイントは二つだ。 kogashigeakitwitter3_reasonably_small

一つは、東電が国会事故調に虚偽の説明をして1号機への立ち入り調査を断念させたのではないかという疑惑に関する第三者委員会の報告についてである。1号機については、その事故の原因が津波であったのか、それとも津波が来る前にすでに地震の揺れで故障が生じてそれが事故原因になったのかという点がはっきりしない、と国会事故調が指摘していた。地震が原因だという証拠はないが、それが原因かもしれないと疑わせるような事実もあるということだ。そこで、事故調が現場を調査したいと東電に申し入れたのに対して、東電の担当者が、現場は事故後の補修でカバーがかけられたため真っ暗で、非常に危険だから調査はできないという趣旨のことを述べて事故調の調査を断念させた。

 

しかし、今年になって、現場は必ずしも真っ暗という状況ではなかったことが判明して、大騒ぎになったのである。担当者が、全く個人的な判断で間違って説明したというのが東電の調査結果だったのだが、こんな重要なことを個人だけで判断するのは極めて不自然だというのはどんな素人から見てもわかる。そこで、経産省は、第三者委員会で調査してもらうようにと指示した。そして、第三者委員会は、東電と同様に、個人的な誤解で間違ったことを言ってしまったのであり、組織的な虚偽説明とは言えないという報告書を出した。

 

ところが、4月5日の長妻昭衆議院議員の質問で明らかになったのだが、東電の第三者委員会は、嘘をついたのではないかと疑われている東電の職員とOBだけにヒアリングをして、国会事故調側の人間の話をきかないまま、東電の担当者は嘘をついていないという結論を出していたことがわかった。両者の言い分を聞いて判断しないで、疑われている人間の言い分だけを聞き取り調査をして出てきた報告書など、何の意味もない。委員が弁護士だろうがなんだろうが、そんな偏った調査で終わりにすること自体、委員会の中立性がないことの証拠である。それを長妻氏が指摘したのに対し、茂木敏充経産大臣は、のらりくらりと逃げようとしたが、問い詰められた結果、驚くべきことにこの報告書について、「適正に検証された」と言ったのである。

 

普通なら、そんな調査はおかしいから、やり直しを命じるとか、もう東電は信用できないから、経産省が調査委員会を作って検証すると言うのかと思ったら、そうではなくて、完全に東電の側に立って答弁したのである。こうなると、結局、経産省も、1号機の事故原因が津波であって地震ではないというストーリーを維持するために東電と一緒になって事実を隠蔽しようとしているのではないかと疑われても仕方ないということになってしまう。

 

その点を当日の報道ステーションで指摘させてもらった。茂木大臣は、マスコミの報道をものすごく気にするらしい。報道ステーションもチェックしているはずだ。私の批判は必ず効果を生むだろうと思っていたが、週明け以降の茂木大臣の行動を見ていると確かにそのような効果が出ているようだ。以下に紹介しよう。

 

 

●どうにもならない汚染水処理と無責任体制

 

 

東電福島原発の汚染水の貯水槽での水漏れが相次いだ。茂木大臣は、東電の広瀬社長を呼んで、机を叩いて、絶対に海に漏らすな、何とかしろと大きな声を出した。わざわざ、テレビを入れて報道させた。さらに、貯水槽の構造そのものに問題がある可能性が高まり、貯水槽の使用をなるべく早くやめろ、という指示を出した。沖縄基地返還と同じパフォーマンスだ。マスコミの報道で批判されるのが怖いから、とにかく自分の庭先は綺麗にしておきたいという程度だろう。とにかく東電を悪者にしようとしているのがわかる。

 

しかし、これまで経産省は何をしていたのか。東電の大株主で、いつでも経営者をクビにできるのだから、事実上、東電の経営責任は経産省にあると言ってもいいくらいだ。それなのに、これまで何もしてこなかった。

 

さらに、原子力規制委員会の無責任ぶりもひどい。二回も続けて停電騒ぎで燃料プールの冷却が止まる事故が起きているのに、立ち入り調査をしていない。貯水槽の水漏れについても同様だ。現場にいる検査官はたったの8人で24時間3交代制で監督しているそうだが、それでは、常時駐在するのはたったの3人ということになる。今頃になって増員と言っているが、そんなことではすまない。

 

まず、事故のすべてについて、外部の専門家も入れて現場の調査を行うべきである。何故、ねずみが原因でよかったね、で済ませてしまうのか。もっと深刻な事故原因があったのかもしれないのに、何も調べていない。福島第一原発全体について、本格的な立ち入り調査を行って、必要な改善措置を命じるべきだろう。何故、一番大事なことをできないのか。一つ間違えれば、再びメルトダウンが起きる可能性が十分あるのにそれを放置している。

 

これに対して、「規制委員会は、7月までに安全基準を作らなければならず、そのために連日徹夜に近い作業を続けている。これ以上負担を拡大するのは無理だ」という同情的な意見もある。確かに、規制委員会が取り組むべき課題はあまりにも多く、その作業負担は完全に組織のキャパシティを超えている。そもそも7月までに安全基準を作るということ自体が「ミッション・インポッシブル」だと言ってよい。

 

しかし、だからと言って、福島第一原発の安全確保を後回しにしても良いということにはならない。ことの軽重から言えば、まずは福島第一に全精力を傾け、余力があれば安全基準作りを行うというのが筋である。そうすると原発の再稼働が遅れるというのは、動かしたい電力業界とそれに動かされる自民党の安倍政権の都合に過ぎない。

 

世界最高の安全基準を作っている間に、福島第一で再びメルトダウンなどいうことにならないように、規制委員会にはプライオリティをはっきりさせてもらいたい。