HOME |福島県の内部被ばく検査受診、市町村の格差拡大 検査まで数年先の地域も 県の指導力不足露呈(FGW) |

福島県の内部被ばく検査受診、市町村の格差拡大 検査まで数年先の地域も 県の指導力不足露呈(FGW)

2013-04-22 12:48:57

「復興に全力を尽くす」の言葉が“口先”だけにならないよう、首相の政治力が問われる(3月末、福島県視察時に子供をあやす安部首相)
東京電力福島第一原発事故の健康影響を調べるための福島県による内部被ばく検査(ホールボディーカウンター(WBC))の受診状況が市町村間で大きく異なっていることがわかった。住民の受診が2巡目を迎える市町村がある一方、検査まで依然、数年待ちの所もある。事故から2年を経過しているにもかかわらず、同県の指導力不足が露呈した形だ。

「復興に全力を尽くす」の言葉が“口先”だけにならないよう、首相の政治力が問われる(3月末、福島県視察時に子供をあやす安部首相)
「復興に全力を尽くす」の言葉が“口先”だけにならないよう、首相の政治力が問われる(3月末、福島県視察時に子供をあやす安部首相)


 

 地元紙の報道では、これまでのところ福島県は、県内全体の正確な受診実態を把握できていないという。検診のための人材確保、広報等の普及活動等が、連携体制がないまま、場当たり的に進められているとの批判もある。県民からは早急な対策を求める声が上がっている。

 国の対応も問題だ。安部首相は先月末、福島県下を訪問、浪江町と富岡町を視察した際、「復興を加速させるため全力を尽くす」と住民に約束したが、「口先だけ激励」に終わらないよう、福島県に迅速な行動をとるよう指導してもらいたい。

 WBCによる内部被ばく検査は、福島県以外に、南相馬市や郡山市、いわき市など20市町村が独自に実施している。県内で最初にWBC検査を開始した南相馬市では、すでに延べ約1万人以上が受診した。一時は9000人ほどいた待機者は今はゼロとなっており、希望すれば早期受診も可能という体制になっている。

浪江町も昨年中に18歳以下の子ども約3700人を対象にした1巡目の検査はおおむね終了し、夏をめどに妊婦を含め、2巡目の案内を出す計画という。これらの地域では住民の放射能汚染への理解も進んでいる。
 一方、人口の多い都市部では検査が追い付かない状況が依然、続いている。人口32万人の郡山市は、これまでの受診者が約4万人で全体の1割程度に過ぎない。市は全市民の検査を終了するには、さらに2年が必要として2015年度を目標としている。

 また、いわき市は原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約6万4000人を優先的に実施してきた。しかし、これまでに検査を終えたのは約4万1000人と、約6割にとどまっている。成人を含めた検査終了がいつになるのかはまだ見通しがつかないという。

 
 車載型のWBCの価格は1台1億円程度。国、県からの補助金がなく、市町村が全額を負担している。県南地方の市町村の担当者は「住民の税金で購入した機器を他の市町村に貸し出した場合、地元住民の反発が予想される」と相互活用の難しさを口にする。
 福島県は当面の検査対象を原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約38万人とし、平成23年6月から避難区域や都市部を重点的に検査してきた。2月末までに検査を終えたのは、3分の1にも満たない約11万9000人にとどまっている。

 県は受診実態を把握するため、独自にWBCを導入した市町村に月1回、受診者の検査結果を報告するよう求めている。だが、一部の市町村から報告が届かず、どれだけの県民が検査を受けたのか正確に把握できていないという。県と市町村の連携不足から、各市町村の待機者解消に向けた有効な対策を打ち出せていない。県県民健康管理課の担当者は「市町村の検査状況を把握できないため、WBCを待機者の多い地域に優先的に配置できなかった」と認める。
 県は今年度中にも、市町村と民間病院に詳細な情報提供を求め、検査結果を一元管理するデータベース化を進める。各地の待機情報を基に、県所有のWBCを優先的に配置するなど対策を進めたい考えだが、WBCの台数に限りがある中、どれだけ待機者の解消につながるかは不透明だ。

http://www.minpo.jp/news/detail/201304227994