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福島原発の汚染水処理切り札装置に難題 新装置でも除染不完全(東京)

2013-05-19 12:29:42

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fukushimaPK2013051902100048_size0東京電力福島第一原発の汚染水処理で、東電と政府が難しい選択を迫られている。ほぼ全ての放射性物質を除去できるはずだった新しい除染装置は試験の結果、性能が目標に届かない。汚染水が増え続ける中、性能が不十分でも本格稼働を急ぐのか、遅れても当初の性能にこだわるのか-。どちらを選んでも課題は残る。 (小野沢健太)


 十七日の原子力規制委員会の検討会で、試運転の結果が報告された。当初の計画では、トリチウムを除く六十二種類の放射性物質が検出限界値未満まで取り除かれるはずだったが、四種類が検出された。ヨウ素129は一ミリリットル当たり〇・〇〇六九ベクレルと、法律で放出が認められる濃度ぎりぎりだった。




 最大の問題とされたストロンチウムは目標をクリアし、全体的にもぐんと濃度が下がった。ただし、「トリチウムしか残らない」との東電の約束は果たせていない。




 福島第一では、原子炉冷却で汚染水が毎日約四百トン増えている。セシウムを除去する装置は稼働して二年近くになるが、多くの放射性物質を含む汚染水が残る。タンクに計二十五万トンもため込まれ、無視できない量の放射線を放っている。




 東電は、今の性能でも新しい装置を稼働させ、早くリスクを小さくすることを優先したい考え。残る二系列も遅くとも七月末までに試運転を始め、本格稼働させたいところだ。




 長期的には難しい問題を抱えても、目先の危険を小さくするのがいいのか。それとも、目先の汚染水のリスクは我慢し、性能が向上したところで新装置を稼働させトリチウムだけの水にするのがいいのか-。規制委の更田(ふけた)豊志委員は悩みながらも「リスク低減の観点からは早く動かすべきだ」と、現状の性能でも新装置を本格稼働させた方がよい、との考え方だ。




 ただし、いったん装置の運転を始めれば、装置は放射性物質に汚染され、手直しして性能を上げるなどの対応は難しい。元の汚染水に比べると濃度は大幅に低いが、一定の汚染が残る水を大量に抱え続けることになる。早く装置の性能向上策を見つけることが急務のようだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013051902000108.html