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柏崎刈羽原発再稼働問題 東電の強硬策が裏目…知事と決裂 (毎日)

2013-07-06 09:01:26

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izumida2001柏崎刈羽原発6、7号機の早期再稼働を目指す東京電力の広瀬直己社長と、再稼働に慎重な新潟県の泉田裕彦知事の5日の会談は物別れに終わった。東電は新規制基準の施行当日8日の申請を見送り、引き続き地元の理解を求める考えだが、安全確保の徹底を求める地元と、一刻も早く原子力規制委員会による安全審査を申請したい東電との隔たりは依然として大きい。

「もう少しやりようがあったと反省している」。広瀬社長は泉田知事との会談でこう述べ肩を落とした。東電が地元説明に先立つ2日に原子力規制委員会への柏崎刈羽原発の再稼働申請の方針を表明したことには、柏崎市の会田洋市長も疑問を呈した。

東電は当初、地元説明を急ぐ考えだったが、再稼働に難色を示す泉田知事に面会できないままだった。新規制基準の施行日が8日に迫る中、焦りを募らせた東電は、批判覚悟で申請表明に踏み切らざるを得なかった。結果的に、この日ようやく泉田知事との面会は果たせたものの、再稼働へのハードルの高さを再確認させられることになった。

東電が再稼働申請を急ぐのは、規制委の安全審査に「半年程度かかる」(規制委幹部)ためだ。すでに4電力会社が5原発、計10基の再稼働申請を決めている。仮に審査の第1陣に入れなくなれば、東電は先に申請する10基の審査を待たねばならず、再稼働までに最低でも1年かかるとみられる。東電にとっては黒字転換に不可欠な年度内再稼働が不可能となり、黒字化のめどは立たなくなる。金融機関による東電向けの融資継続もおぼつかなくなる。

「地元」と「経営」の間で苦しい判断を迫られる東電。しかし、地元の理解が不十分なまま申請に踏み切れば、かえって再稼働に不可欠な地元同意が遠ざかりかねない。泉田知事は毎日新聞のインタビューに、規制委の新基準は不十分で、クリアしたとしても「安全を確保したことにはならない」との考えを示し、政府の対応にも疑問を投げかけている。東電社内からは「知事の要請の多くは、国の政策に関わるもの。政府の助力が必要」(取締役)との声も漏れており、今後は政府の対応も再稼働のカギになりそうだ。【浜中慎哉】

 ◇地元、三者三様


 

「規制委の審査と、県の了解手続きを同時並行で進めさせてほしい」と求める広瀬社長に対し、泉田知事は「安全安心と、お金、どちらが大事なのか」「申請前に県の事前了解を。まずはうそをつかない、(県との安全協定という)約束を守ること」と譲らない。5日にあった両者の会談は5、6回このやりとりを続けた後、最後に泉田知事が「話がかみ合わないなら、どうぞお引き取りください」と打ち切り、物別れに終わった。

会談は、原子力規制委員会がこの日の「午後3時まで」と求めていた事前届け出の締め切り時刻より遅い午後4時に設定され、東電は事前届け出を見送った。会談ではさらに泉田知事の強硬な抵抗に遭い、8日の申請を断念した形だ。

会談後、広瀬社長は「(知事との)リターンマッチをお願いしたい」とし、あくまで早期の申請を目指して知事の了解を得る努力を続ける意向を示した。

知事との会談に先立ち、広瀬社長は5日午前、原発が立地する新潟県柏崎市の会田洋市長と同県刈羽村の品田宏夫村長を訪問。会田市長は「フィルター付きベント装置の設置は市の事前了解事項だと再三、申し上げてきた。必要な手続きを取られず申請を発表したのは誠に遺憾で信頼関係を損ないかねない」と不快感を示す一方、申請そのものは「東電の問題」と黙認する姿勢を示した。品田村長は「柏崎刈羽原発はエース級の重要施設。福島の復興を応援するという思いから本来の姿に戻ることを願っている」と申請を歓迎。三者三様の受け止め方を示した。【高木昭午、塚本恒】

http://mainichi.jp/select/news/20130706k0000m040110000c.html