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原子力規制委員会は 福島事故の収束を手抜きし 「原発を再稼働することを最優先する機関」に成り下がってしまった(古賀ブログ)

2013-07-13 14:43:04

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福島第一原発の汚染水で海洋汚染~原子力規制委員会と経産省の責任を忘れるな~

●再稼働より先に海洋汚染対策をkogashigeakitwitter3_reasonably_small

 

東京電力福島第1原発の敷地内で超高濃度の放射性汚染水が検出されたことが、問題になっている。原子力規制委員会の田中俊一委員長は10日の記者会見で「海洋汚染は大なり小なり続いていると思う」と述べている。汚染源の特定と対策を検討する作業部会を近く設置することも決定された。東電は、事故直後の2011年4月に2号機取水口付近で汚染水が漏れたときに残留していたものが今回漏れてきたのではないかという楽観的な見立てを述べたり、環境への有意な影響は見られないという見解を出したりして、世間の顰蹙を買っている。

 

ここで注意しなければならないのは、マスコミは、東電批判だけはするものの、もっと大事なことを伝えていないのではないか、ということだ。

 

東電に責任があるのは確かだが、東電と規制委が対立しているという図式で描くのはおかしい。漁民や一般市民から見れば、東電がちゃんとやらないとすれば、誰がそれを正すのかということを知りたいはずだ。

 

まず、東電は国有化された会社だ。経産省は、いかようにも東電に対して指示出来る立場にある。この問題については、2年前の事故直後から、数多くの専門家が、メルトダウンした原子炉から、放射性物質が地中に漏れる可能性を指摘していた。地中の調査をすぐに行うべきだという提案もなされていたし、原子炉建屋の周囲の地面を掘って、水を通さない岩盤の深さまでコンクリート壁を作って放射性物質を閉じ込めるべきだということも繰り返し指摘されていた。

東電が昨年夏に国有化された後、経産省は、この点について、どのような指示を出したのか。また、昨年秋に規制委が活動を開始した後、規制委は東電に対して調査や指示を行ったのか。その点について、マスコミは全く追求していない。

 

いつものように、東電を叩いて、東電vs規制委という対立の図式を作って、面白おかしく報道している。

 

そもそも、日本の安全規制の体制は、安全最優先にはなっていないことが、今回も明らかになった。福島で海洋汚染が続いていると認めた田中委員長の言葉は、どこか他人事だった。海洋汚染が続いているなら、大変な問題だ。何故、昨年秋の規制委発足時に、最優先課題としてこの問題に取り組まなかったのか。

まず、現在の危機に対応することの方が、再稼働の準備をするよりはるかに大事なはずだ。今頃になって、作業部会を作ると聞いて、私は、開いた口がふさがらなかった。これから、検討するのか、とがっかりしてしまう。

 

規制委員会は、まず、福島の事故の収束に全力を挙げるべきだ。その上で、余力があれば、再稼働の判断に必要な安全基準作りやその審査をやれば良い。優先順位を明確に逆転すべきである。

 

それが、できないなら、日本の規制委は、原発を再稼働することを最優先する機関に成り下がってしまったということを内外に宣言していることになる。マスコミは、規制委の言うことを鵜呑みにして、規制委がすべてという報道をしているが、規制委の委員がそんなにすごいプロの集まりなのかどうか、よく吟味したらよい。しかも、それを支える規制庁の職員の能力は規制委のレベルとは比べ物にならないくらい低いのだ。「正義の味方・原子力規制委員会」という報道はもういい加減に止めてもらいたいものだ。

 

そして、経産省も東電の過半の議決権を有し、実質的に東電を支配しているにもかかわらず、何ら有効なアクションを取っていない。茂木経産相は、選挙で忙しいのだろうか。大臣なら、選挙中であっても、大臣室に戻って、この緊急事態に真剣に取り組むべきだろう。

 

それにしても、こんなダメ政府とダメ規制委が日本の原発の安全を確保できるとは到底思えない。にもかかわらず、再稼働の手続きだけは着々と進んでいる。真夏の暑さの中でも背筋が寒くなる思いをするのは私だけではないと思う。