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東京都、都立施設50件の契約を 東京電力から中部電力系に切り替え 大手の電力越境「第1号」 東電経営ますます苦境に(東京)

2013-08-16 14:54:34

東電から中電系電力への乗り換えを進める猪瀬東京都知事
東電から中電系電力への乗り換えを進める猪瀬東京都知事
東電から中電系電力への乗り換えを進める猪瀬東京都知事


東京都は十月から、都立施設約五十カ所の電力契約先を、東京電力から中部電力グループの新電力に切り替える。これまで大手電力十社の地域ごとの独占体制が続いてきたが、大手電力の販売地域を越える「域外供給」の実質的な第一号となる。猪瀬直樹知事は、大手電力間の競争を進め、電力供給元の多様化や将来の電気料金引き下げにつなげたい考えだ。 (臼井康兆)

都によると、都立施設に供給するのは、中部電グループの新電力「ダイヤモンドパワー」(東京都中央区)。同社は都が今月上旬に行った入札により、中央ろう学校(杉並区)、中央・城北職業能力開発センター(文京区)、八王子盲学校(八王子市)など四十八カ所への電力供給を落札した。契約電力は計約一万キロワットとなる。

域外供給は二〇〇〇年から工場などの大口契約で認められているが、現在は九州電力が中国電力管内の大型小売店に例外的に販売する一件にとどまっている。

東電から、中部電グループを含む新電力四社に契約を切り替える都立施設は、四月時点の三十施設から、十月時点で約三百施設と十倍に増加。この切り替えで、都の一年間の電気代の7%に相当する約二億円を削減できる。

都は、都庁(新宿区)の他にも、出先機関や都立学校など計約千二百の施設を所有し、全ての契約電力は原発一基分の出力に相当する約百万キロワットになる。従来は大口顧客として、東電と電力契約を独占的に交わしてきた。

しかし、東日本大震災後、原発事故や計画停電で東電の供給態勢の弱さが露呈したことから、東電と新電力の両者から供給を受ける「複数契約」を自治体で初めて導入するなど、新電力への切り替えを進めてきた。

ダイヤモンドパワーは三菱商事の100%子会社の新電力だったが、中部電が買収する方針が今月初めに表面化。大手電力が新電力を傘下に収めるのは初めてとみられ、電力小売りの完全自由化を控え、中部電の首都圏の足掛かりとなるとみられていた。

中部電は、首都圏で電力の小売りに参入する狙いを「将来の収益基盤を確実にする」と説明している。電力需要の大幅な増加が見込めない中、市場規模の大きい首都圏など中部地方以外でも顧客の開拓を目指す方針だ。

<新電力> 正式名は特定規模電気事業者。8月現在で全国に90社あり、契約電力50キロワット以上の事業所や工場に電気を供給する。家庭用などを除いた電力自由化部門に占める新電力のシェアは、6月現在で4・02%。24時間稼働する大規模発電所を持つ電力会社に比べ、調達できる電力量は限られるが、電気料金を安く抑える。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013081690135729.html