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東電福島原発廃炉 長崎原発製造拠点だった米ハンフォード廃炉サイトをモデルに 汚染水除去でも類似(Bloomberg)

2013-08-17 21:32:59

東電福島原発廃炉のモデル(?)米ハンフォードの廃炉サイト
東電福島原発廃炉のモデル(?)米ハンフォードの廃炉サイト
東電福島原発廃炉のモデル(?)米ハンフォードの廃炉サイト


8月16日(ブルームバーグ):東京電力  は福島第一原子力発電所の廃炉に米国が核関連軍事施設の廃棄で培った技術を応用することを検討している。具体的にはプルトニウムの製造施設廃棄時に用いられた「安全貯蔵」と呼ばれる方法の利用を視野に、核兵器の製造や管理なども担う米エネルギー省との協議を重ねている。    

同社原子燃料サイクル部の石川真澄部長が、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで明らかにした。石川氏によると、廃炉の方法は建屋や原子炉を全て撤去し更地に戻す「即時解体」のほか、今回東電が検討している約70年間密閉し放射性物質の減少と技術開発の進展を待ってから解体する「安全貯蔵」方式や、原子炉などを完全にコンクリートで密閉することで完了するチェルノブイリで採用された「石棺」方式がある。

即時解体の場合には、放射線量の高い燃料の運搬などに被ばくを防ぐための膨大な対策費用がかかる。安全貯蔵や石棺の場合には、その作業が不要になるためより少ない費用で廃炉が可能になるという。

東電は2012年9月に米エネルギー省との間で、汚染された地下水の処理や遮水の技術、廃棄物処理の技術の福島第一原発への適用方法の研究について6カ月間の委託契約を締結。この契約を踏まえ、東電はこれまでにエネルギー省が管理するハンフォード・サイト(ワシントン州)やサバンナリバー・サイト(サウスカロライナ州)などの核廃棄物貯蔵施設への視察を3回行った。エネルギー省関係者も福島第一原発を3回訪問しており、同省が提供可能な技術を調査した。

7分野で検討  

視察や意見交換を踏まえて、東電はエネルギー省との間で協力が可能な分野として、廃炉、廃棄物処理、溶融した燃料の取り出し、原子炉格納容器や圧力容器などの穴をふさぐ止水、地下水などの汚染のモニタリング、周辺地域の復興など7分野に絞り込んだ。今後の具体策や米国側の技術の活用の可否について検討を進めているという。結論を出す時期について、石川氏は未定だと話した。

ワシントン州南東部にあるハンフォード・サイトの敷地面積は586平方マイル(1518平方キロメートル)と、東京ディズニーランド約3200個分に相当する広大な施設。1943年に世界初の本格的な原子炉が設置されてから87年に廃止されるまで敷地内の原子炉や処理施設で核兵器用プルトニウムの精製や発電を行っていた。

エネルギー省のウェブサイトによると、長崎に投下された原爆「ファットマン」に使用されたプルトニウムもハンフォード・サイトで製造された。現在では福島第一やチェルノブイリに並ぶ規模の核廃棄物の問題を抱えた施設として知られており、89年からエネルギー省と環境保護庁、ワシントン州環境当局が共同で廃炉や除染に取り組んでいる。

汚染水という共通の課題    

ハンフォード・サイトでは福島第一原発と同様に汚染水の問題もある。地下の廃棄物貯蔵設備などから汚染水が漏れ出しており、地下水を通じて敷地内を流れるコロンビア川への漏えいの危険性が危惧されている。汚染水浄化システムが6基稼働しており、汚染物質の除去を行っている。エネルギー省は89年以降、既に160億ドル(1兆5640億円)以上を廃炉と除染作業に費やしている。同サイト内に貯蔵されている放射性廃棄物の量は約5600万ガロン(約21万2000立方メートル)と、オリンピックの競技用プール約85個分に達している。

東電の福島第一原発でも1日約400トンのペースで原子炉建屋に地下水が流入しているために汚染水の増加を止められず、観測用の井戸で採取された水や護岸に近い海水からも放射性物質が検出されており、対応に苦慮している。経済産業省は7日、1日およそ300トンの汚染水が海に流出しているとの見解を示した。石川氏は、こういった規模の汚染水問題には「前例が少なく、先生となるような存在が欲しい」と述べ、米国側の持つ経験に関心を示した。

周辺地域の復興    

東電が関心を寄せているのは廃炉や汚染水対策の技術だけではない。石川氏によると、ハンフォード・サイトでは廃炉作業の進展に合わせて「研究者が集まり周辺地域に産業が起きて町が発展した」という。エネルギー省がハンフォード・サイトで導入した復興プログラムを福島第一原発の周辺で応用することも視野に入れている。

東電が6月27日に示した工程表によると、使用済み燃料プールかららの燃料取り出しを今年11月に始め、溶融した燃料の取り出しは2020年度上半期までに開始することを予定している。原子炉の廃止措置が終了するまでには30-40年必要と計画されている。

東電は昨年11月、廃炉に必要な費用が1兆円を超え、除染や損害賠償の費用を加えると10兆円以上が必要になりそうなことから、「一企業のみの努力では到底対応しきれない規模となる可能性が高い」との見解を発表。菅義偉官房長官は7日の会見で国も一歩前に出て支援する必要があり、汚染水対策に国費を投入する考えを明らかにした。

国際的な提案募集も視野 

東電のほか電力各社や三菱重工業、東芝、日立GEニュークリア・エナジーなど17社が廃炉に必要な技術の開発を共同で進めるため、国際廃炉研究開発機構を1日に設立した。同機構の山名元理事長(京都大学原子炉実験所教授)は8日に都内で会見し、国内企業の知見を集約するだけでなく、米エネルギー省や国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構(OECD)とも「密接な連携をとる」と話した。国際的な提案を募ることも視野に入れていると述べた。

山名氏は「とにかく溶融した燃料を取り出すことが重要」と話し、この分野の研究開発を優先課題として取り組む考えを明らかにした。原子力規制委員会は14日、東電が福島第一原発の廃炉に向けた工程管理を強化するための実施計画を認可した。規制委は、安全対策に問題があった場合、東電に廃炉計画の変更を命令することができるようになった。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 岡田雄至  yokada6@bloomberg.net;東京 佐藤茂  ssato10@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Alexander Kwiatkowski  akwiatkowsk2@bloomberg.net

 

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MR34OV6KLVR801.html