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機構法修正案が国会提出、東電支援で 株主等への協力要請義務付け(3) (Bloomberg) 「協力」の中身が焦点に

2011-07-26 19:31:50

7月26日(ブルームバーグ):民主、自民、公明、たちあがれ日本の4党は26日、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた原子力損害賠償支援機構法案の修正案を国会に提出した。同事故で東電が資金援助を機構に申し込む場合、株主らに対して必要な協力を求めることを義務付けた。修正案は同日夕の衆院東日本大震災復興特別委員会で賛成多数により可決された。週内にも衆院を通過し、8月31日までの今国会で成立する見通し。

  ブルームバーグ・ニュースが民主党関係者から入手した修正案によると、株主への協力要請を義務付けたのは付則の第3条。施行前に生じた原子力災害に関して資金援助を申し込む原子力事業者は「経営の合理化および経営責任の明確化を徹底して行う」ほか、賠償の迅速かつ適切な実施のため、「株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない」と明記した。

  野村証券の魚本敏宏チーフクレジットアナリストは「支援機構法の成立に実現のめどがついたのはポジティブだ」としながらも、株主ら利害関係者への協力要請が付則で義務付けられたことについては「重く見ざるを得ない。かつ支援機構の設立が10月以降になるようで、ランニングが長いので、債務超過認定のリスクも残るし、株主および貸出債権を中心にダウンサイドリスクが払しょくできない」との認識を示した。

  政府案は東電福島第一原発事故を念頭に、法律施行前の事故も機構による資金援助の対象とすることを示しただけだった。修正案には民主、自民、公明の3党が22日に大筋合意。その後、文言の調整を続けて、たちあがれ日本も提出に加わった。

ステークホルダー

  一方、修正案は株主などの利害関係者が協力要請に従う義務までは条文上は明示していない。自民党の石破茂政調会長は26日午後の記者会見で、株主などの協力について「いわゆる権利義務の関係で担保された所までこの条文が昇華をしたものだとは認識していない。立法者の意図としてどうなのかということでは、かなり厳しい責務をステークホルダーにかけたものだという認識だ」と述べた。

  大和投資信託の長野吉納シニアストラテジストは株主への協力要請について「今のところ、どういった協力なのか具体性が見られないので、売買の判断材料にしようがない。東電の株価下落で、株主は既に相応の責任・負担を負っているともいえる」と指摘している。

国の責務

  修正案は第2条で原子力損害に対する国の責任について言及。国は「これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っている」とした上で、機構が損賠賠償の迅速かつ適切な実施を行えるよう「万全の措置を講ずる」と規定した。

  また、原子力発電所を保有する各電力会社の負担金については「原子力事業者ごとに計数を管理しなければならない」ことも明記。法律施行後は早期に、東電福島第一原発事故での東電と政府の負担の在り方、東電の株主その他の利害関係者の負担の在り方を含め、「国民負担を最小化する観点」から施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする、とした。

  26日の衆院特別委では、政府案の前提となった政府の賠償支援スキームの取り扱いについて政府と野党側で議論になった。スキームは東電を「債務超過にさせない」方針を盛り込んでおり、5月の関係閣僚会議でまとめ、6月に政府提出法案と同時に閣議決定された。

修正スキーム

  石田祝稔氏(公明)が今回の法案修正でこのスキームが「法律と方向性が必ずしも一致しないと思うが、それで内閣が拘束され続けるのか」と指摘。これに対し、枝野幸男官房長官は「閣議決定の文書そのものは一定の役割を果たしたと思っているが、こうしたケースの場合に閣議決定やその一部が撤回をされるというようなケースはない」との認識を示した。

  海江田万里経済産業相は東電が債務超過に陥る事態は「想定していない」と明言した。柿沢未途氏(みんな)への答弁。

  修正協議に関わった自民党の西村康稔衆院議員は22日、記者団に対し、スキームは「法律制定に伴い、意味がなくなる」と強調していた。

  特別委は26日、修正案可決に伴う付帯決議案も採択。同案によると、同委員会は政府のスキームについて「その役割を終えたものと認識し、政府はその見直しを行うこと」を求めている。

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