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放射性物質コメに影響は 日本土壌肥料学会会長に聞く(河北新報)

2011-08-02 20:27:15

なんじょう・まさみ 東北大大学院農学研究科修士課程修了。農業技術研究所(現農業環境技術研究所)の研究員、東北大農学部助教授を経て教授。2010年4月から日本土壌肥料学会会長。専門は土壌立地学。大崎市出身。58歳
放射性物質によるコメへの汚染について、農林水産省は1日、収穫時の検査方法を今週中に関係自治体に指示する方針を示した。コメ汚染対策の一環として、今春、国の作付け制限基準作りに協力したのが日本土壌肥料学会。会長を務める東北大大学院農学研究科の南條正巳教授は「コメへの影響が現実にどう出るのかは、よく分からない。収穫時検査の徹底が必要だ」と指摘している。(聞き手は編集委員・長谷川武裕)

 ―農水省は4月、それまで行った水田の土壌調査で放射性セシウム濃度が土1キログラム当たり5000ベクレルを超える可能性が高い地域と、福島第1原発から30キロ圏内のコメの作付けを制限した。

<移行係数0.1に>

 「土の中に含まれる放射性物質が、作物にどれだけ吸収されるのかを示す移行係数という数値がある。国は玄米への移行係数を0.1に設定した。食品衛生法の玄米の暫定規制値が500ベクレルであることから、土壌ベースでは5000ベクレルとし、作付けを制限した」
 ―0.1という移行係数はどうやって算出したのか。
 「国内の実際の水田での観測から得られた白米への放射性セシウムの移行係数は、0.00021から0.012。最も移行度の高い0.012として、土の中の放射性セシウムの1.2%が白米に移行する」
 ―作付け制限基準は玄米ベースで、移行係数の観測データは白米だ。双方の放射線量の違いは。
 「玄米は白米の約1.4倍から2倍、放射線量が高くなるとされる。玄米を基準とした国の作付け制限基準は、安全性に配慮した結果、4倍から6倍程度厳しく設定した計算になる」
 ―コメへの影響で懸念される点は。

<正直分からぬ>

 「まず第一に、移行係数はある意味、平常時の研究から算出されたデータであって、今回の原発事故による高濃度の汚染土壌にそのまま適用できるかどうか、はっきりしないことがある。稲わら汚染が広範囲に及び、さらに汚染牛も多数出ていることも考え合わせると、コメへの影響がどう出るのか、分からない部分があるというのが正直なところだ」
 ―ホットスポットと呼ばれる汚染度の高い地域が見つかっている。
 「土壌汚染の情報が少ないまま、田植えの時期を迎えたこともあり、作付けした地域にも汚染度の高い水田があった可能性は否定できない。作付け制限に関して国が安全に配慮した基準を設定したのは確かだが、詳細な土壌汚染地図はできていない。国が主導して早急に作るべきだ。肉牛のケースを見れば、コメについても出荷段階でのチェックをどうするのかなど、対策に万全を期すべきだと思う」

なんじょう・まさみ 東北大大学院農学研究科修士課程修了。農業技術研究所(現農業環境技術研究所)の研究員、東北大農学部助教授を経て教授。2010年4月から日本土壌肥料学会会長。専門は土壌立地学。大崎市出身。58歳


http://www.kahoku.co.jp/news/2011/08/20110802t15009.htm