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再生エネ発電、震災・原発事故被災地の市民団体参入 ソーラーシェアリングで農作物と発電両立(河北新報)

2014-08-20 12:02:23

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renfukushima20140820011je東日本大震災からの復興に向け、被災地の市民団体が再生可能エネルギーによる発電事業に取り組んでいる。売電によって農業経営を安定化させたり、非常時の電源として活用したりする狙いがある。関係者は「地域再生を加速させたい」と意気込んでいる。(小沢邦嘉)

<8年で回収>
福島県南相馬市原町区の太田地区に約7アールの農園「再エネの里」がある。大豆やブドウが育つ地面に、一定間隔で高さ2.5メートルの支柱が並ぶ。その上部には計120枚の太陽光パネル(合計出力30キロワット)が据えられている。
農園を運営するのは一般社団法人「えこえね南相馬研究機構」。震災後に市民有志が設立し、昨年9月に耕作と発電を始めた。

 

発電した電力は、国の固定価格買い取り制度に基づいて売電している。作物販売と2本立てにすることで、収入を安定させるのが目的だ。設備費など約900万円の投資は、8年程度で回収する見込みになっている。

 

日差しが一部遮られることで当初は生育への影響も心配されたが、既にタマネギ、ニンニクなどを収穫した実績がある。機構の理事を務め、畑を所有する農業奥村健郎さん(57)は「今のところ発電量も農作物の育ちもほぼ計画通り」と語る。

<海風も利用>

福島では原発事故の風評被害に苦しむ農家が少なくない。収入増で生産意欲を向上させようと、機構は市内8カ所で同様の事業展開を計画する。
 

機構の高橋荘平理事長(38)は「市民に『面白い』と思われる挑戦を続け、多くの参加者を募りたい」と先を見据える。

 

深刻な津波被害を受けた三陸沿岸では、海風の利用が進む。ことし2月、陸前高田市の旧広田水産高仮設住宅に高さ約13メートルの風力発電機(出力5キロワット)が設置された。

 

事業は約40世帯の被災住民でつくる「田谷地区集団移転協議会」が主体。災害時の電源確保や地域づくりを目的とし、設置費用は県の補助金などで賄った。売電はしておらず、普段は仮設住宅の談話室の照明などに電力を使っている。

 

協議会は、将来の風車増設や蓄電池設置を視野に入れ、漁船の電動船外機や海産物を運ぶ電気自動車に電力を活用する構想も描く。村上俊之事務局長(51)は「住民が夢を語り合えるようになった。風力で地域復興を果たしたい」と話す。

 

東北大の新妻弘明名誉教授(エネルギー環境学)は「大手資本の発電所誘致だけでは地域社会を育てる視点に欠ける。住民が当事者意識を持ち、なりわいに結び付ける取り組みは意義が大きい」と指摘している。

 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140820_73024.html