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経産省、原発会計制度再び”粉飾”見直しへ。原発廃炉の損失1基210億円(FGW)

2014-11-25 15:53:51

ASBJは会計への信頼性を維持できるか
ASBJは会計への信頼性を維持できるか
ASBJは会計への信頼性を維持できるか


経済産業省は25日、運転開始から40年前後の老朽原発7基の廃炉により、電力会社の損失額が1基当たり約210億円になるとの試算をまとめ、電力会社の負担軽減のため会計制度を再び改める方針だ。

 

原発の廃炉に伴う会計基準の変更は、昨年も実施されている。二度にわたる変更となると、日本の電力会社の財務諸表が”粉飾”ではないかという疑念が、海外から生じる可能性も高まる。企業会計基準委員会等が企業会計の信頼性を維持できるかが問われる。

 

原発を運転開始から40年で廃炉にするという原則は、国際的に共通している。また日本でも福島原発事故以後、原則として40年廃炉を定めてきた。これを受けて、政府は電力会社に引当金を積む制度を設けてきた。しかし、日本の引き当て制度は電力の生産高比例方式で、実質的には40年以降の延長を前提にしてきた。

 

さらに2010年には推計将来費用を前倒し償却する資産除去債務(ARO)を導入したが、電力会社については例外として従来どおりの引当金方式の積立額を将来費用に置き換える手直しにとどめた。その後、40年廃炉が現実化してきたことから、引当金方式では原資不足になることが明瞭となり、昨年、経済産業省は生産高比例方式での引き当てに変えて、定額方式に切り替えるとともに、廃炉になっても実際の原子炉の解体が本格化するまで引き当て・減価償却を継続できるよう会計制度を変更した。

 

こうした変更は、投資家からみれば、実際の廃炉費用を見えなくすることにつながるとして批判を受けた。ただ、この時の”粉飾”は、原子炉解体費に限定した形で、実際の廃炉ではそれ以外の使用済み核燃料処理費、周辺設備費等の負担をカバーしきれない。また、40年以内に廃炉を選択しなければならない場合も、積み立て不足が明らかになる。

 

こうしたことから、昨年の会計制度の変更に続いて、再び、廃炉に伴う費用を、電力会社が負担できる範囲内にとどめるための二度目の会計制度変更を行おうということのようだ。経産省がこれまで電力会社に認めてきた総括原価方式ならば、原発の廃炉費用もこれまでの発電原価に盛り込まれていたはずで、二度にわたる会計制度変更は、経産省の「原発行政の失敗」を改めて浮き彫りにする意味しかない。