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電力自由化のカギとなる「発送電分離」 2020年実施へ。政府、電気事業法改正案閣議決定。果たして自由な競争を確保できるか(東京)

2015-03-03 15:30:00

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denryokujiyuka2015030399135828政府は三日、大手電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」を二〇二〇年四月に実施する電気事業法の改正案を閣議決定した。

今国会中の成立を目指す。既に一六年四月から、家庭に電気を販売する小売り事業は自由化されることが決まっている。「電気の通り道」を大手電力会社以外にも開放するのが今回の改正の柱で、発電部門への異業種からの参入を促す。競争による電気料金の値下がりも期待される。

 

現在の送配電網は後発の発電会社が使う場合、大手電力会社に託送料を支払って送電網を使わせてもらわねばならない。

 

託送料の設定根拠もはっきりしないため、割高と感じる発電会社が多く、参入する企業は増えていない。

 

今回の法改正で大手電力各社は送配電部門を別会社にして託送料を明示。自社グループの発電部門とグループ外の発電会社に対して同じ条件の託送料で送電網を貸し出す。送電網の規模が小さい沖縄電力は対象外とした。

 

現在は国が審査して決めている家庭への電気料金も地域ごとの競争状況を見極めて規制を撤廃する。ただ競争がないまま規制が撤廃されて電気料金が急に上がらないようにする。

 

一方、政府はこの日、ガス事業の自由化も進めるため、ガス事業法の改正案も閣議決定した。

 

一七年をめどにガスの小売り事業にいろいろな企業が参入できるようにし、電気とガスのセット販売などを手掛けられるようにする。

 

二二年四月には事業規模の大きな東京、大阪、東邦(名古屋市)の三社について、ガスの導管事業を別会社化。パイプラインの託送料を明示させ、ガスの精製にも異業種から参入できるようにする。

 

◆業界反発、延期の懸念

<解説>

今回の電気事業法の改正案は、東日本大震災と福島第一原発の事故を機に始まった電力改革の総仕上げと位置付けられている。電力の小売りや発電を地域ごとに独占してきた大手電力会社の発送電の仕組みに風穴をあけるのが狙いだ。多くの企業が参入して競争し、家庭や企業が多様なサービスを低料金で受けられるようになるかが焦点になる。

 

四月には大手電力会社が電力需給をチェックし、足りない地域にほかの地域から送電するよう指示する機関を設置することが決定済み。二〇一六年四月からは電力の小売りが自由化される。ガス会社や携帯電話会社などが参入を予定し、ガスや通信とのセット割引や、生活リズムに合わせた料金メニューなど、多様なサービス展開が期待される。

 

今回の発送電分離の改革は、これらに続く「第三段階」だ。経済産業省は「電力・ガス取引監視等委員会」を設置。大手の電力やガス会社がグループ外の企業に送電網や導管を公平な条件で使わせるよう監視する。

 

だが大手電力やガス業界は改革に慎重だ。閣議決定はされたが、自民党内には「原発の再稼働が遅れている中で自由化を進めると大手電力会社の経営が厳しくなる」との意見が根強い。また、法案の付則には、需給の改善状況を検証し「必要な措置を講じる」との一文が盛り込まれた。経産省側は改革の延期は「想定していない」と強調するが、業界や自民党などから原発に絡め、延期を求める声が強まる懸念もある。(吉田通夫)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015030390135828.html