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ほぼ全世帯を除染 福島市が計画を修正 国の支援など不透明 (福島民報)

2011-10-07 16:16:50

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福島市内約11万全世帯の除染計画を示しながら費用負担対象を放射線量の比較的高い世帯のみとしていた市は6日、市内ほぼ全世帯の屋根と雨どいを業者委託で除染する方向で対象を拡大した。危険な屋根の除染を行政主導で行うよう求める市民の声や、国の財政支援の方針が示されたことを受けて軌道修正した。市災害対策本部会議で明らかにした。2年以内に終える予定だが、流した水や汚泥の問題、費用や担い手の業者確保など実施へ向けた課題は多い。

 福島市は細野豪志環境相兼原発事故担当相が年間被ばく量が5ミリシーベルト未満の地域の除染でも国の財政支援の対象とするとの発言を受け、除染対象の大幅な拡大を決めた。
 市が当初示した除染計画では、毎時2・5マイクロシーベルト以上と高校生以下の子どもや妊婦のいる毎時2・0マイクロシーベルト以上の世帯に限っていた。しかし、線量が達しない多くの地域から批判の声が相次いだため国の財政支援の裏付けが取れたことで計画を修正した。

 方針拡大で対象となるのは年間積算線量が1ミリシーベルトを超す全戸。毎時に換算すると0・23マイクロシーベルト以上となるため、現在の福島市内ではほとんどの世帯が該当する。1ミリシーベルト未満でも希望世帯には支援を検討する。

 危険を伴う屋根や雨どいなどの高圧洗浄や宅地内の線量の高い場所での除染は市が業者に委託して実施する。

 放射線量が高い大波地区で18日から市内のトップを切って除染を始める予定。屋根や雨どいなどを環境に優しい洗剤を使用して高圧洗浄する。

 6日の市災害対策本部会議に出席した政府の東日本大震災復興対策本部福島現地対策本部長を務める吉田泉財務政務官(衆院本県5区)は「年間5ミリシーベルトにかかわらず財政支援するとの政府の方針は明確になっている」と述べた。

 市の新たな計画に期待が高まる一方で、横たわる課題が危惧されている。

 市は国の財政支援を見込んで、業者への委託を決めたが、国の具体的な財政支援方法は示されていない。このため、9月の一般会計補正予算で確保した通学路や生活道路などの除染費用とした1億円などの予算を捻出して取り組む。しかし、担当者は「現時点では大波地区が精いっぱい。他の地区で仮置き場が決まり、除染が始まれば現実的に予算が足りなくなる」と本音を漏らした。

 

担い手について、市は塗装業や建設業、造園業などを想定しているが、除染を希望する業者がどの程度あるかも不透明だ。11日に開く業者向け説明会で全体像を把握するが、除染のノウハウの講習などの問題も残る。

 大波地区以外では決まっていない仮置き場の確保も急がれる。市は道路や側溝の除染で出た土は仮置き場に一時保管することを決めている。民家で出た土は原則、敷地内に保管するため除染は可能だが、場所が決まらないと地域全体の「面的」な除染は足踏み状態となる。
 さらに市民から洗浄で流した水に放射性物質が含まれていないかとの疑問の声も上がっている。これに対して市は、環境省の見解などから「放射性セシウムは粘土に吸着するため、土を除去すればそのまま流しても問題ない」との認識を示している。

 政府の原子力災害現地対策本部が特定避難勧奨地点の指定を見送る方針の福島市渡利、小倉寺両地区で、小倉寺地区の1地点は指定するかの判断を保留とした。8日に開く対象住民への説明会で伝える。

 市によると、説明会時点での指定は見送られるが今後も国と協議を続けるという。小倉寺地区の1地点は両地区の詳細調査で最も高い毎時3・1マイクロシーベルトが観測されていたが、住民から「避難しない」との意志を示されていた。

 市民からは実施の手法などに注文を付ける声も出ている。


http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9895378&newsMode=article