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玄海原発4号機、運転再開にまつわる3つの大罪(Greenpeace)

2011-11-04 13:44:51

昨日は、玄海原発4号機の運転再開のニュースで緊迫した空気が流れた。玄海原発4号機は、10月上旬に人為的なミスによって自動停止していたが、その運転を再開したのだ。この4号機はもともと、12月には定期検査のために停止する予定だった。

グリーンピースも昨日、この運転再開について声明を発表し九電に抗議文を送った。

今回の運転再開には3つの大罪があると思うので整理してみたい。

1つ目は、10月に自動停止した理由が「人為的なミス」だったことだ。技術屋さんなら当たり前の話らしいが、事故につながるのは人為的なミスから始まることが多い。 スリーマイル島での事故も、東海村JCO臨界事故も結局はそうだった。 たとえ、どんなに技術が優秀だったとしても結局は人為的なミスが重なって事故となる。

人為的なミスで機械的な故障ではないから、すぐに運転再開するというのはまったく逆の話で、「人為的なミス」であったからこそ、あらゆる工程を見直す必要がある。 だからこそ、1か月だけ運転再開して定期検査のために12月に止めるのではなく、「職員への指導徹底が必要なため、通常の定期検査より時間がかかる。よって、このまま停止したまま定期検査に入る」とすべきだった。

2つ目は、九電の「やらせ」の責任が明確になっておらず、地元の理解が得られていないことだ。

今、電力会社と地元住民との信頼関係は皆無に近い。かろうじて、一部の人間に落ちる金という目的のために、同居できているにすぎない。特に九電の信頼は地に落ちていて、それは「やらせ」問題を引き起こした企業体質が改善されていないままだからだ。
今回の運転再開の強行は「やらせ」どころではなく、「脅迫」に近く「電力供給を握っている限り、市民の声なんてどうにでもできる」と言わんばかり。今回の件で、電力を市民の手で、市民のものに取り返したいと改めて思う。

そして、強調したいのは3つ目だ。 今回の「運転再開」が定期検査後の「再稼働」と混同されることを危惧している。 一部メディアでは、「再稼働」という言葉を連呼し、さらに「福島原発以降、初の再稼働」という言葉も使っている。 もちろん間違いではないが、九電の罠にはまってしまっている。

このニュースで、多くの人が「これで止まっている原発が次々に動き出してしまうのか」というイメージを持ったに違いない。しかしこれは違う。今回の4号機も12月には定期検査に入る。そこからストレステスト(これにも問題が多い)を経て、最終的には地元了解、経産大臣の承認のもと「再稼働」となるのが手順らしい。

この定期検査後の「再稼働」こそ、地元首長や経産大臣にとってまさしく「頭痛」となっているものである。なぜなら一つ間違えば、政治生命を絶たれる決定だからだ。それが、今回の九電の「運転再開」が定期検査後の「再稼働」と混同されることで、定期検査後の「再稼働」は国民の目からは「初」ではなくなり、既成事実として進めやすくなる。

九電は「やらせ」で責任をとらない代わりに、枝野大臣に「頭痛薬」をプレゼントすることで手を打ったのか?その証拠に枝野大臣は、「やらせの責任をとらないままでの運転再開は認められない」ともコメントせず「事業者が決めること」とした。見て見ぬふりだ。

もちろん、人為的なミスで停止した原発の方こそストレステストをすべきだ。だからこそ、運転再開すべきではない。

私たちがやるべきは、今回の運転再開を徹底的に批判するとともに、同じことが定期検査後の「再稼働」で行われないように着々と準備することだと思う。

グリーンピース・ジャパン 事務局長 佐藤潤一

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/43/blog/37629/