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除染発注で混乱 手法で価格差、市町村苦悩(福島民報)

2011-11-07 12:57:35

放射性物質の除染で、住宅の材質によって費用に大きな開きが出るなど新たな問題が浮上し、福島県下の自治体の除染担当者らが頭を悩ませている。仮置き場の選定も難航しており、除染実施の遅れにつながる可能性も出てきた。一方、県が始めた除染業務講習会は技術的な指導が行われず、事業者から「骨抜きの内容」との不満も漏れる。

■算定困難
 「除染は前例がない。次々と新たな問題が出てくる」。全域の約11万世帯の除染計画を打ち出した福島市の担当者は困惑した表情を浮かべた。

 先月から始めた大波地区の除染を基に、作業を発注する際の適正価格を設定する予定だった。だが、算定は難航している。大波地区の1軒当たりの業者の見積額は屋根などの材質によって100万円以上の開きが生じた。

 屋根であればトタンと瓦では作業の工程や難易度も違い、料金に跳ね返る。壁は凹凸のあるなしで、使用する薬剤の量が違ってくる。庭も土、芝生、コンクリートで除染作業の内容が変わる。住宅密集地は足場を組む必要が生じ料金がかさむ。

 さらに、業者が放射線にさらされる特殊作業の費用をどう算定するかという問題も浮上した。地域で異なる環境放射線量ごとの費用の基準が必要となるが、対応策を見いだせていない。「市独自に価格を設定するのは困難だ」。市の担当者はため息をついた。

 福島県放射性物質除去協同組合は、総2階建て延べ床面積約130平方メートルの建物を除染する場合、15万円~50万円までの差が出るとする。佐藤哲也理事長は「基準は極めて詳細な分類が必要になる」と指摘。基準が曖昧な場合、業者間の価格競争につながりかねず、作業の品質への影響を懸念する。
 

福島市は今年度内に、比較的線量の高い渡利地区の約6700世帯を対象に除染に入る予定だ。ただ、適正価格の基準設定ができないため、1軒ごとの住宅の状況を調査し必要費用を算定する方針。仮置き場の選定作業に調査の手間が加わり、除染開始が来年度にずれ込む可能性もある。

 菅野広男渡利地区自治振興協議会長は「市の具体的な動きが見えず、住民は不安を募らせている。詳細な現状説明が必要だ」と求める。一方、市の担当者は「国は除染に責任を持つというが、市町村をリードして取り組もうとする姿勢が伝わらない。現場の苦悩を理解すべき」と注文した。

■不十分な指導

 「高圧洗浄などの機器類を使う場合の効率や安全対策など、現場で役立つ技術を指導すべきだ」。福島県が主催する事業所対象の除染業務講習会に参加した県北地方の建築業者は、不満をあらわにする。

 講習会は2日間の日程で開かれ、放射線の基礎的知識に関する講義、放射線の測定方法の実技などを行っている。しかし、高圧洗浄する際の効果的な水圧、洗剤の使用方法、表土除去の手法など技術的指導はない。
 

受講者が1回100人程度と多く、技術指導にまで手が回らないという背景もある。しかし、県の内部からは「除染技術は発展途上で、県として効果的な洗浄や表土除去方法の基準を提示することは難しい」との声も漏れる。

背景

 政府の除染に関する緊急実施基本方針は、年間積算放射線量が1~20ミリシーベルトの区域について市町村が除染計画を策定し、除染作業を行うとしている。福島市は9月に策定した除染計画に「今後2年間で、市民の日常生活環境における空間放射線量を市内全域で毎時1マイクロシーベルト以下にすることを目指す」とする目標を掲げた。比較的放射線量の高い大波地区と渡利地区を最重点除染地域とし、優先的に除染する。大波地区で10月に集中的な除染作業を開始した。

http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9904876&newsMode=article