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「戻れる人から戻ろう」 川内が帰村宣言(福島民報、河北新報) 

2012-02-01 15:13:56

記者会見で帰村宣言する川内村の遠藤村長(右)
東京電力福島第一原発事故で全村避難した川内村の遠藤雄幸村長は31日、県庁で記者会見し、「帰村宣言」した。県内外に避難する住民約3千人に向け「戻れる人から戻ろう」と村内での生活再開を呼び掛けた。佐藤雄平知事に支援を要請した。警戒区域などの避難区域にかかり役場機能を移した9町村で帰還を宣言するのは初めて。ただ、帰還には放射性物質の除染や雇用の確保などの課題が山積している。

記者会見で帰村宣言する川内村の遠藤村長(右)


 記者会見した遠藤雄幸村長は「2012年は復興元年。スタートしなければゴールもない。感謝の気持ちを忘れることなく、試練を乗り越え、共に凜(りん)として、たおやかな安全な村をつくろう」と、本県を含む全国28都道府県に避難している約3千人の村民に向けたメッセージを読み上げた。
 宣言には強制力はなく、住民が自らの判断で帰村することになる。遠藤村長は「早急に結果を求めていない。2、3年かけてわが家に戻ってもらえればいい」と述べ、行政がいち早く戻り、帰村者を迎える体制を整えることが復興への近道との考えを示した。
 帰村の課題として低線量被ばくの不安払拭(ふっしょく)や積雪で計画通り進まない除染などを挙げた。

文部科学省によると、村内の積算線量推計値は大部分で年1~5ミリシーベルト。村は「安全性は確保された」としている。
 村は昨年11月から村復興事業組合による除染を行っている。公共施設や小中学校、保育園、子どものいる世帯を優先的に進め、3月末までに完了する予定だ。4月から村役場と保育園、小中学校、診療所を再開する。
 村は警戒区域内の160世帯の帰還を促すため、区域外に仮設住宅を建設する方針だ。政府は4月をめどに、現在の避難区域を積算線量に応じて3区域に再編。村の警戒区域は「避難指示解除準備区域」に想定されている。
 原発事故で村は警戒区域と緊急時避難準備区域に分断された。昨年9月に緊急時避難準備区域が解除された。村は当初、昨年12月に帰村宣言を予定していたが、除染の遅れや避難住民への説明などで先送りしていた。
 会見には西山東二村議会議長、高野恒大村行政区長会長、猪狩貢副村長が同席した。

※川内村

 東京電力福島第一原発の南西、阿武隈高地にある標高400~600メートルの山村。震災の発生当時、住んでいた約2990人のうち9割以上が避難し、役場機能を郡山市に移した。2012年1月末の人口は約2880人。村の面積約200平方キロのうち耕地は約5%で、大部分は山林。葉タバコの栽培や稲作、畜産など1次産業が盛ん。平伏沼(へぶすぬま)はモリアオガエルの繁殖地として国の天然記念物に指定されている。「カエルの詩人」として知られるいわき市出身の故草野心平は名誉村民。村には草野の蔵書を収めた「天山文庫」がある。

 

http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4147&blockId=9929656&newsMode=article

川内村「帰村宣言」 村民「国・東電信じられない」(河北新報)


 

福島第1原発事故で役場機能を移転した福島県内の9町村で初めて、川内村が「帰村宣言」を出した。緊急時避難準備区域の指定が昨年9月末に解除され、大半の村民が帰れる状況になったが、現在住んでいるのは村人口の7%。地域崩壊を警戒する村は早期帰還を呼び掛けるものの、賠償問題や放射線への不安、産業復興などを乗り越えなければならない。

 川内村では電気、ガス、水道、ごみ処理などのインフラは復旧済み。村中心部の空間放射線量は毎時0.1マイクロシーベルトで、福島市や郡山市の数分の1程度と低く、他市町村より帰還への環境は整っている。
 しかし、村民の帰還は進まない。村人口約3000人のうち現在、村内に住むのは約200人。昨年9月の時点では約220人で、緊急時避難準備区域の指定が解除され、帰還が促されたにもかかわらず、減少した。
 帰還に踏み切れない大きな原因として村民が指摘するのは、皮肉にも、避難者の生活を守るための原子力損害賠償の存在。
 原発事故による避難者には、精神的損害に対する賠償として東京電力から1人当たり月10万円が支払われているが、避難先から村に戻れば受け取れなくなるからだ。
 「村民の約7割が郡山市に避難している。お金をもらって都会で暮らせるうちは、田舎の村には戻ってこない」と村民の一人は賠償制度の在り方を疑問視する。
 村内の線量は比較的低いが、放射線への恐怖感は全村避難を経験した村民に刻み込まれた。村中心部から第1原発への距離は20キロちょっと。村東部は今も警戒区域だ。
 事故対策が後手後手になった国や東電への不信感は強い。「国の事故収束宣言は誰も信じていない。(建屋が壊れ)むき出しの3号機や4号機が大きな余震で崩れたらまた避難だ」と別の村民は話す。
 村はコメの作付け制限を今年も継続する方針を示し、「コメを作れないのでは帰っても仕方がない」と農家には落胆が広がっている。
 「景気がいいのは除染ビジネスだけ。村民が戻ってこないので商店は大変だ。村の産業構造がいびつになりかねない」と村商工会は危機感を強める。

 

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/02/20120201t61019.htm