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原発:5キロ圏に15万人…新設PAZ、避難時の渋滞懸念(毎日)

2012-02-10 15:21:19

国が取りまとめている原子力事故の防災指針で新たに設定される原発から半径5キロの予防防護措置区域(PAZ)圏内の人口が、全国で15万人に達するとの試算を埼玉大の谷謙二准教授(人文地理学)がまとめた。重大事故が起きた場合、PAZ内の住民はただちに避難を開始することになるが、全国17原発のうち5原発の圏内人口は1万人を超えており、専門家は住民が一斉に避難する際に交通渋滞や移動手段の不足が生じ、混乱する可能性があると指摘する。

 ◇埼玉大准教授が試算


 試算は05年国勢調査に基づき、各原発周辺の人口を500メートル四方ごとに集計。人口が最大だったのは、住宅街に近接する日本原子力発電東海第2原発(茨城県)で、4万8060人に達した。美浜、敦賀両原発(福井県)では73人が双方のPAZ圏内に入った。

 政府は新たな防災指針の中間取りまとめを今年度内に策定する方針。原発の地元自治体には、新指針に沿った地域防災計画を9月末までに作成するよう求めている。

 しかし、自治体からは「検討課題が多く、難しい」との声が上がる。東海第2原発が立地する東海村は「避難に必要なバスなどの移動手段を大量に確保することが当面の課題と思うが、村単独で対応できるレベルではない」として国や県の指導を待つ。中部電力浜岡原発を抱える静岡県御前崎市も「3万人を避難させる手段がない」と頭を抱える。

 京都大防災研究所の畑山満則准教授(防災情報論)は「被ばくを恐れる住民がパニックに陥り、個々に車で避難すると交通渋滞を招く恐れがある」と指摘。住民が行政の指示に従い避難するには「官民の間で信頼関係を構築していないといけない」と強調する。

 圏内の人口が少ない場合でも、原発立地地域の多くは交通が不便という問題を抱える。福井県美浜町の関西電力美浜原発近くでは、陸路の避難経路が海岸沿いの県道しかない。同町は「道路の整備が課題だ」として対応を検討する。【比嘉洋】

 ◇予防防護措置区域(PAZ)◇


 原子力事故の新たな防災指針で原発から半径5キロ圏を目安に設定される区域。炉心溶融などの重大な原発事故が起きた場合、放射性物質の大量放出前に圏内の住民を優先的に避難させなければならない。半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)内では、放射線量の実測値が基準値を超えた地区の住民が順次避難を開始する。PAZ圏内にとどまった場合の全身被ばく線量は、確実に健康被害が出る1日1シーベルトに達する恐れがあるとされる。PAZとUPZを設定する防災対策は欧米の原発立地国の多くで採用されている。

 ◇原発半径5キロ圏の推計人口(人)◇


泊(北海道)     3422

東通(青森)     1093

女川(宮城)     2069

福島第1(福島) 1万3088

福島第2(福島) 1万3400

東海第2(茨城) 4万8060

浜岡(静岡)   2万5010

柏崎刈羽(新潟) 1万5908

志賀(石川)     2922

敦賀(福井)     373

美浜(福井)     730

高浜(福井)     4407

大飯(福井)     943

島根(島根)     9687

伊方(愛媛)     4771

玄海(佐賀)     7479

川内(鹿児島)    3023

合計      ※15万6312

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120210k0000m040115000c.html

※敦賀、美浜の重複73人を除く