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民間事故調、「しがらみなし」 官邸や東電の責任ばっさり (各紙)

2012-03-01 14:11:49

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各紙の報道によると、東京電力福島第1原発事故について、民間の立場で独自に検証してきた「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」は27日、独自の報告書をまとめ、公表した。菅直人前首相の行動を「混乱や摩擦のもとになった」と政治の動きを批判する一方で、東電の事前対策の不備を「人災」と指摘している。

 民間事故調の最大の特徴は、しがらみがない、自由度が比較的高い点だ。政府が設置した事故調査・検証委員会(政府事故調)や国会による事故調査委員会(国会事故調)と異なり、特定の機関から調査を委託されていない。その半面、民間機関の総意を集めているわけでもないため、「民間事故調」と名乗る正当性があるのか、という指摘もある。すべては調査内容の深みと冷静さがどこまで維持されているかにかかっている。

 原発事故を巡る調査委員会がこれほど複数設立されるのも各国にはない事態だ。その中で、これまでに公表された政府事故調や東電の中間報告は、どちらかというと、「原発内で何が起きたのか」という物理的事実の解明が中心とされた。たとえば、政府事故調は「官邸内の連携が不十分だった」と構造的な問題点を指摘した。ただ、政治家個人の責任追及はしておらず、東電は「厳しい環境下での対応を余儀なくされた」と自己弁護に終始している。

 これに対して、民間事故調は、「政府と東電が『国民を守る』責任をどこまで果たしたか検証する」として、菅前首相ら政府関係者の聞き取りを重視した。特に、事故対応に即した官邸の問題点を検証した。報告書は、事故直後の官邸内の政府首脳の言動や思考を分析した結果、「官邸による現場介入は無用な混乱を招いた」と指摘している。また他の事故報告書が触れていない「最悪シナリオ」にも言及し、政府が情報を隠蔽したと強調している。

東電に対する評価については、国際原子力機関(IAEA)の原則を引用、「東電は第一義的な責任を負わなければならない」と指摘している。しかし、同社にはこれまで過酷事故への備えがなく、冷却機能喪失に対応できなかったことが事故の影響を大きくした。これらの点を指摘して、「『人災』の性格を色濃く帯びる。『人災』の本質は東京電力の過酷事故の備えの組織的怠慢にある」と述べている。

 ただ、民間調査にも課題が残った。国政調査権に基づく国会事故調や政府事故調とは異なり、民間事故調の場合は任意調査のため、調査対象の同意を元に進めねばならない点がネックとなった。実際には東電に調査協力を拒まれたことから、技術的な問題点の指摘については、十分に掘り下げられず、結果的に政府事故調の調査内容をほぼ追認する形だった。「民間事故調」と名乗って独自調査する意欲だけではなく、調査の中身が国民、並びに国際的に問われていることを思えば、中途半端な調査力ではかえって議論の焦点をぼかしたのではないかとの、批判もある。