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廃業の波じわり 宮城・南三陸町の商工業者、震災の影響深刻(河北新報)

2012-03-06 14:54:25

震災前は商店が立ち並んでいた南三陸町志津川地区の中心部
東日本大震災で商業圏が壊滅した宮城県南三陸町で、事業再開を断念する商工業者が増えている。中止・廃業は約2割に上り、態度を決めかねている事業者も今後、廃業へ傾く可能性がある。同町は大型店が立地する登米、石巻、気仙沼地域に囲まれ、商業圏の空洞化が深刻な地域。疲弊する地域経済に震災が追い打ちを掛けている。
 同町志津川南町で鮮魚店を夫婦で営んでいた西城聖さん(76)は津波で店を流され、廃業を決めた。「体が動くうちは続けたかったが、もう80歳近い。冷蔵庫など数百万円の設備投資は無理だ」と説明する。
 廃業か再開かを迷う経営者も少なくない。
 同町歌津伊里前で中華料理店を営んでいた渡辺幸雄さん(56)は津波で店を失い、再開するかどうか悩む。最も心配なのは人口の減少だ。
 「震災前の疲弊した商店街を忘れてはいけない。客足が落ちているところに、震災で人口が減った。冷静に考えなければ、再開しても赤字に陥る」。渡辺さんは町の都市計画などを見極めた上で判断するという。
 震災で顧客が仮設住宅に離散し、住民の町外移転も相次ぐ。高齢者夫婦がほそぼそと営んでいた個人商店が多く、店を畳むケースが目立つ。
 南三陸商工会の昨年11月末の調べによると、震災前の会員数は562件。うち被災件数は473件。再開が258件(54.5%)の一方、中止・廃業は88件(18.6%)に上る。127件(26.8%)が判断を先送りしている。
 中止・廃業の内訳は、製造業に比べ商業の割合が高く、6割を占める。一方、建設業や水産加工関連企業などは7割前後が復旧にこぎ着けているという。
 同商工会によると、中止・廃業の多くは個人商店で、(1)人口流出による経営環境悪化(2)後継者不足(3)高台の移転用地不足-などが背景にあるという。
 商店を取り巻く環境は厳しい。
 同町の1月1日現在の推計人口は1万5141人で、昨年3月1日現在と比べ2237人も減少した。気仙沼市や石巻市ではスーパーや大型店が既に営業しているのに対し、同町は商店街があった志津川、歌津両地区が壊滅。車で40~50分かけて町外に買い物に出掛ける住民が多いという。
 事業を再開した258件のうち、町外へ移転した会員も29件ある。同商工会の佐々木守事務局長は「仮設住宅に住みながら、建築の下請け工事に従事する個人事業主なども『再開』に含めている。実態は数字以上に厳しい」と話す。態度を保留する会員についても「再開する可能性はよく見積もって半分ぐらい」とみる。
 町は水産と観光の2本柱で交流人口拡大を図ってきた。佐々木事務局長は「今は妙案が見いだせない。仮設商店街を足場にイベントを地道に展開し、町内外から客を呼び込むサイクルを生み出したい」と展望を語る。

 

震災前は商店が立ち並んでいた南三陸町志津川地区の中心部


http://www.kahoku.co.jp/news/2012/03/20120306t12028.htm