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インタビュー:原発再稼働、絶対安全の確証が必要=滋賀県知事(Reuters)

2012-04-07 20:37:59

4月6日、滋賀県の嘉田由紀子知事は、ロイターのインタビューに応じ、近隣の若狭湾岸に集中する関西電力などの原子力発電所の再稼働について「絶対安全だと確証が取れるまではイエスと言えない」と強調した。大津で撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)
[大津 6日 ロイター] 滋賀県の嘉田由紀子知事は6日、ロイターのインタビューに応じ、近隣の若狭湾岸に集中する関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)などの原子力発電所の再稼働について「絶対安全だと確証が取れるまではイエスと言えない」と強調した。

4月6日、滋賀県の嘉田由紀子知事は、ロイターのインタビューに応じ、近隣の若狭湾岸に集中する関西電力などの原子力発電所の再稼働について「絶対安全だと確証が取れるまではイエスと言えない」と強調した。大津で撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)




嘉田知事はその理由として、「福島並みの事故が若狭の発電所で起きたら、風下には1450万人の命の水源である琵琶湖がある。万一のことがあれば近畿の産業も生活も成り立たなくなる」などと説明した。

野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係4大臣は6日、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題に関する協議で、再稼働の条件となる暫定の新しい安全基準案を正式に決定した。この暫定基準は、原子力安全・保安院が福島事故を踏まえて3月にまとめた30項目の安全対策が基になっている。

この暫定基準について嘉田知事は、「30項目の中でも中長期的に数年かかるとして(電力会社の対応が)できていない項目もある。そこを(暫定基準から)外して、出来たところだけを持ってきて、基準をクリアしたというのは納得しがたい。技術的安全性で中途半端なところで妥協しているようにみえる」と指摘した。また政府が大飯3・4号の再稼働を決定した場合は、「(枝野)大臣にお越しいただきたい。政治判断するなら責任ある判断のできる方を要望する」と述べた。

インタビューの主な内容は次の通り。

──政府が4大臣会合を開いて原発の再稼働に向けた新しい安全基準を出した。大飯3・4号機の再稼働に向けて前のめりになっている印象があるが、政府の検討状況、手続きの進め方に対する見解は。

「見切り発車ではないか。大変不安だと申し上げている。感情的に言っているのではない。福島並みの事故が若狭の発電所群で起きたら、滋賀県も被害を受ける地元だ。琵琶湖は若狭湾に対して秋冬春に風下にある。不安を持っている滋賀県としては確実に絶対安全だと確証が取れるまでは再稼働についてイエスとは言えない。141万県民の健康と命だけではく、琵琶湖は京都、大阪、神戸、1450万人の命の水源なので、万一のことがあったら近畿の水がなくなり、産業も生活も成り立たなくなる」

「(新安全基準の基になった保安院策定の)30項目を出した安全対策のうち、電源の配置などすでに出来ているものあるが、防潮堤を上げるとか、免震の建物を造るとか、万が一ベントしたときにフィルターをかけるとかまだ出来ていない項目もある。中長期的に数年間かかるとそれらを外して、出来たところだけで基準をクリアしたというのは納得しがたい。技術的安全性で中途半端なところで妥協しているようにみえる」

「国会の事故調査委員会の最終報告書さえまだ出来ていない。事故原因の中では地震の影響をとても気にしている。若狭はかなり活断層もあり地震の巣窟。地震の影響などを原因究明できていないのに、対策がとれたというのも論理的にあわない。国会の事故調が重い判断を行い、原因究明を公表してもらわないと国民的に納得いかないと思う」

──枝野経産相が再稼働を決めたら福井県には自ら説明に行く意向を示したが、滋賀県には「しかるべき人を出す」という。藤村修官房長官は滋賀県などに理解を求めるが、必ずしも同意は必要ないとの見解を示している。意思確認はどのような形を要望するか。

「基本的には(枝野)大臣にお越しいただきたい。政治判断というなら責任ある判断ができる方にお越しいただきたいと要望している」

──安全基準はどのようにしたら納得できるか。

「30項目のうち、ベントのフィルターをいつ付けるのか。防潮堤のかさ上げは完了しないと安全とは言えない。そのための基準ではないか。ただ、どうしても電力が足りないと経済が疲弊する電力不足リスクと安全基準のリスクがトレードオフ(二律背反)だろう。そのトレードオフ関係を透明度をもってもっと見せてほしい」

──いまの検討の進め方では大飯3・4号機の再稼働は嘉田知事としては認められないか。

「認められない。意思は表明し続ける。ただ国は(滋賀県は)無視してもいいという言い方だ。同意は必要ないということだから。原因究明、完全なる対策ができないと安心とは言えない」

──需要に対して供給が足りない場合は需要を減らすしかない。安全が確認できるまでは苦しくても頑張ることをこの夏、日本国民が経験してもいいのではと個人的には思うが、その価値判断が問われている。

「エネルギーや電気に対しての価値転換をしないといけない。無尽蔵にいつでも使いたい放題使えるものではない。われわれも夏少し暑いのを我慢するとか、涼しいところに出かけて家のクーラーを使わないとか。昨年(夏)やった段階で、特に電力制限令を出さずに関西で5%くらい節電効果があった。ポイントは変動価格。(企業などの節電分を電力会社が買い取る)ネガワットなど市場メカニズムの中に節電を入れ込むことだ」

「幸いにも関西広域連合が一昨年の12月に出来た。関西広域連合のエネルギー検討会議で需給見通しを出そうとしている。広域の責任を持つ母体として節電計画を作りましょうと去年の夏から取り組んできた。去年は、電気予報を広域連合が(関電に)提案した。経済的なメカニズムと社会的なメカニズムを国民運動的に持っていくことによって難局を乗り切ることを呼び掛けていきたい。最初から安易なリスクがある再稼働に行くのではなく、エネルギーにどう日本人が関西の人が立ち向かうか、ぎりぎりの経験をするほうが社会として健全だ」

「地域のことは地域で決めるという地域主権改革の最先端を関西は走り始めた。背景には琵琶湖・淀川水系での上下流連携がある。国がダムが必要だと言ったときにダムは必要ないという意見書を大阪、京都、滋賀、三重で出した。国におんぶにだっこ(で依存)していたら、地域にとって望ましい判断ができないという学習があった」

(インタビュアー 浜田健太郎 久保田洋子)

(ロイターニュース、浜田健太郎)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE83500J20120406?pageNumber=3&virtualBrandChannel=0