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新たなホットスポット懸念 地表の放射性物質が移動 山林周辺などに流れ込む(福島民報)

2012-05-03 19:57:11

※単位はマイクロシーベルト/時間。測定は午後5時現在。飯舘村は平成24年5月1日のみ午後5時現在、他は午後7~8時現在。川俣町山木屋は平成24年5月1日のみ午後5時現在、他は午後7時現在。測定地点は県北保健福祉事務所、郡山合同庁舎、白河合同庁舎、会津若松合同庁舎、南会津合同庁舎、南相馬合同庁舎、いわき合同庁舎、飯舘村役場、山木屋駐在所(平成23年5月1日は山木屋郵便局)
東京電力福島第一原発事故から約1年2カ月がたち、福島県内の放射線量は低下傾向にある。放射性セシウムが減衰している一方で、雨や風で放射性物質が移動する「ウェザリング効果」が要因とみられる。山林の放射性物質が平地に集まり、局地的に線量が高い新たな「ホットスポット」ができる可能性が指摘されている。森林総合研究所(茨城県つくば市)は森林からの放射性物質の流出を調べるため、県内6地点で雪解け水の汚染調査に乗り出した。

■ウェザリング効果

昨年5月1日から今年5月1日までの福島県内7方部と計画的避難区域の飯舘村と川俣町山木屋地区の空間放射線量の推移は【表】の通り。全ての地点で低下している。

環境省福島環境再生事務所は、放射性セシウムの減衰が主な要因とみている。現在、環境放射線量に影響を与えているセシウム134の量が半分になる半減期は約2年、セシウム137の半減期は約30年。原発事故から時間がたつにつれ、半減期が短い放射性物質が減少し、線量は下がっているとみられる。

警戒区域に設定された福島第一原発から半径20キロ圏内の空間線量も低下傾向にある。文部科学省による20キロ圏内の調査では、定点測定している55カ所のうち、4月16日から19日にかけての調査で最も空間線量が高い地点は「大熊町夫沢(福島第一原発から西南西3・0キロ地点)」で毎時52・9マイクロシーベルトだった。この地点は、調査を開始した昨年5月から7月ごろにかけては毎時80マイクロシーベルトを上回っていた。その後、次第に低下し、今年3月ごろからは毎時60マイクロシーベルトを下回っている。    同省原子力災害対策支援本部は「放射性セシウムの減衰に加え、ウェザリング効果の影響が大きいと考えられる」としている。風や雨で地表に付着した放射性セシウムが移動し、川や海に流れた可能性が高いとみている。

ただ、移動した放射性セシウムが建物の雨どいや側溝などに集まることで、局所的に空間線量が高い「ホットスポット」が新たに生じる可能性があるという。



■下がらぬ地域

局地的に放射線量が高い特定避難勧奨地点として県内で最多の142地点(153世帯)が指定を受けている南相馬市。市西部の山あいの地域に点在している。    市によると、市内全体では空間放射線量がおおむね横ばいか低減している。しかし、特定避難勧奨地点周辺の一部地域では比較的線量が下がりにくい傾向にあるという。

市除染対策課の担当者は「山林の放射性物質が線量低減を阻んでいる可能性がある」とウェザリング効果の影響を指摘。「山林近くの住宅の除染実証試験でも、瓦やコンクリートなどは放射性物質が染み込んでいるため、高圧洗浄の除染では効果が上がらなかったようだ」と話す。

また、公共施設の除染の一環として周辺の除草を行った一部施設では、除染前と比べ、空間放射線量が毎時0・1~0・2マイクロシーベルトほど上昇する例もあった。市除染対策課は「表土に蓄積した放射性物質を草が遮蔽(しゃへい)していた可能性がある」とみている。



■雪解け水

森林総合研究所は森林から放射性物質が流れ出ているかどうかを調べるため、本県の渓流6地点で雪解け水の汚染調査を行っている。

調査地点は浜通りの広野町と飯舘村、中通りの郡山市と二本松市、伊達市、会津地方の会津若松市。融雪期の水量は午後から夕方に増加傾向があるため、午後2時から自動採水機で2リットルを採取し、定期的に回収した上で民間機関に分析を依頼している。結果は農林水産省から公表される見通しだ。

研究所によると、雪解けによる増水で周囲の土壌が削れたり、表土に染み込んだ水が流出したりして、森林内の放射性物質が下流の農地に流れ込む可能性があるという。

研究所は「雪解けで渓流の増水期に放射性物質も流れることがあるのか、あるとすればどの程度の濃度になるのかを調べたい」としている。



※ウェザリング効果

土壌や構造物に付着した放射性物質が雨で流されたり、風に運ばれて移動し、放射性セシウムの量が減少すること。これにより環境放射線量が低下する。一方、移動した放射性物質が集まりやすい場所は、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」となる可能性がある。

 
※単位はマイクロシーベルト/時間。測定は午後5時現在。飯舘村は平成24年5月1日のみ午後5時現在、他は午後7~8時現在。川俣町山木屋は平成24年5月1日のみ午後5時現在、他は午後7時現在。測定地点は県北保健福祉事務所、郡山合同庁舎、白河合同庁舎、会津若松合同庁舎、南会津合同庁舎、南相馬合同庁舎、いわき合同庁舎、飯舘村役場、山木屋駐在所(平成23年5月1日は山木屋郵便局)
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