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なぜ福島の原発事故はチェルノブイリより問題が大きいのか(米IPSのAlvarez氏の分析の仮訳)

2012-05-12 00:11:43

Robert Alvarez
Robert Alvarez(4月20日Institute for Policy Studies)

Robert Alvarez


: 福島第1原発4号機に貯蔵されている使用済み核燃料の問題は、原子炉格納庫の溶融よりも、はるかに大きな影響を有しており、問題である。事故から1年以上を経過して、メディアの世界は、ようやく今回の東電福島事故が日本および世界に与える真の危険性を把握し始めたところといえる。

一部の日本の元官僚や専門家、そして先に来日して調査した米議員らが繰り返えす警告を受けて、廃墟のような原子炉内に放置されている使用済核燃料が周辺地域に及ぼす影響の大きさが、ようやく理解されるようになってきた。最近、福島のサイトを訪問した米議員のロン・ワイデン氏は日本の駐米大使(藤崎一郎氏)に対して、「使用済燃料を貯蔵しているプールが破損等を起こすと、最初の事故をはるかに上回る放射能が放出される結果となりえる」と記した書簡を送った。

 

その理由は、核燃料プールに貯蔵されている使用済燃料は、数年分にわたる量で、かつプール自体は原子炉とは異なり、強固な保管構造になっていない点にある。またそのうち、いくつかのプールは現時点で、4号機の建屋が破壊されているため、大気に直接触れている状況である。それらは地上から100フィート(約30メートル)のところにあり、新たな激しい地震が起きてプールの構造が打撃を受けると、おそらく揺れて崩れるだろう。その結果、燃料をためているプールの水は流出し、露出した燃料棒はオーバーヒートし、外壁をとかし、燃え上がるだろう。

火災の発生は、大規模な放射性物質を数百マイルの範囲に拡散させる可能性がある。特に使用済燃料は放射能の汚染度が高い。使用済燃料を取り除こうとしても、たちまちのうちに致死量に達する。使用済燃料は世界で最も危険な材料の一つであり、長期にわたってリスクを拡散する。このため汚染された地域は人間の環境を守るために、万年単位にわたって隔離されなければならなくなる。

チェルノブイリの事故から26年が経過した。同事故は、原子炉を強固なコンクリートと鉄鋼で包んでいなかったという愚かさを露呈した。福島第一の事故は、使用済燃料を地上から高いところに、かつ脆弱なプールに保管していたという愚かさを露呈した。両方の事故に共通するのは、セシウム137を大量に環境中にまき散らしたことである。その半減期は30年もかかる。いったん環境中に排出されると、生物相に蓄積し、長年にわたって食物連鎖に影響を及ぼす。

いったん体内に入ると、約75%は筋肉組織に滞留する。特に、心臓を動かす筋肉組織に影響を与える。チェルノブイリの被害者の慢性被ばくの研究によると、心臓疾患の警戒基準を超えている。特に子供への影響が大きい。とりわけ重要なのは、福島原発のサイトには、10,833本もの使用済燃料棒が貯蔵されており、おおよそ 327 million キュリーの長期影響を及ぼす放射能が予想される。そのうちセシウム137は132 million キュリーで、チェルノブイリで放出された量の85倍にも上る。

状況の緊急性は、福島周辺で地震が多発していることである。4月14~17日の間に、マグニチュード 4.0 – 5.7の地震が13回も発生している。これらの数値は、昨年の3月11日の事故発生時からの最頻値である。より大きな地震が事故現場の近くで起きうるリスクが高い。東京電力は、使用済燃料2,274本を壊れた原子炉から取り除く計画を明らかにした。しかし、それを実現するには少なくとも10年はかかる。

最優先事項は、4号機のプール内の燃料を除去することだ。同プールはすでに構造的なダメージを受けており、.それだけでチェルノブイリの10倍ものセシウム137を含んでいるためだ。しかし、4号機のプールからの燃料棒の取り出しは楽観的に見たとしても、2013年末に作業を始められるかという状況である。

どうして福島第一のサイトにそれほど大規模な使用済燃料が保管されていたのか。その最大の理由は、六ヶ所村の再処理施設に送ることを想定していたと思われる。プルトニウムやウラニウムが再処理工程で使用済燃料から抽出され、高速増殖炉において再利用される計画だった。しかし米国は、数十年の時間と、数十億ドルを費やした挙句に、そうした核燃料サイクル計画を30年前に放棄した。

過去60年にわたる高速増殖炉の歴史、特に最近の日本のもんじゅ計画の歴史は、失敗の連続だった。もんじゅは昨年11月にキャンセルされた。仮に東電の使用済燃料処理計画が現実化すると、もんじゅに移管できないので、その大半を、現状の不安定なプールに保管することになる。東電は事故原子炉を使用済燃料の廃棄用のプールにしたいのだろう。 現時点で、共通プールは80%の貯蔵率なので、余裕を作るために燃料棒を取り除く必要がある。

米議員のワイデン氏は東電のこうした燃料棒浄化計画は、大きなかつ長期にわたるリスクを伴うと警告している。彼は、現在のプール内の燃料棒を安定した貯蔵庫に移管することが最優先課題と勧告している。大事なことは、福島のサイトにあるすべての使用済燃料を多くの乾燥した貯蔵カスク(貯蔵庫)にまず入れることだ。そのためには約 244 の追加的な貯蔵カスクが必要となる。費用は1カスクあたり$1 mllion だろう。この目標を達成するためには、日本だけでは不十分で、国際協力が不可欠だ。ワイデン氏が指摘した通りである。非常に激しい地震と津波にもかかわらず、9つのカスクは無傷だったことは、事故から得られた重要な教訓であることを忘れてはならない。

http://www.ips-dc.org/staff/bob