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ペシミズムへ向かう日本人(むささびジャーナル)

2012-06-17 19:51:19

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米国のPew Researchが日本の現状について日本人の意識調査を行った結果が発表されています。この調査は今年の3月20日から4月12日にかけて700人の日本人を対象に電話(固定電話)を使って行われたものです。調査結果はここをクリックするとフルに見ることができますが、Pew Researchは昨年の大震災のあとにも日本で調査を行っており、今回の結果は、この1年間における日本人の意識の変化を数字で示すものとなっています。

記事はイントロの部分で、日本人の70%が原発への依存の度合いを減らすべきだと考えており、これは昨年の大震災直後よりもかなり高いものである、と報告しています。また政府に対する不満も大いに高まっており、そのことが日本のこれからに対する悲観論の台頭にもつながっているとしている。

Pew Researchが昨年行った調査の中に次のような質問があった。

  • As a result of the March 11 earthquake and tsunami, do you believe Japan will become a stronger nation or a weaker nation?
    3月11日の地震と津波の結果、日本は強くなると思うか、弱くなると思うか?


1年前の調査では日本人の6割(58%)が、あの地震と津波が却って日本を強くすると考えていたのに、現在ではこの数字が4割(39%)にまで下がっているとしている。反対に大震災や原発事故が日本を弱くすると答えた人は昨年は32%であったのに現在では47%にまで上昇しているというわけです。


その他の数字を羅列してみると・・・。


  • 78%:日本の進んでいる方向に不満

  • 93%:日本は経済状況が悪いと思っている

  • 12%:政府はよくやっていると思う(5年前は50%だった)

  • 30%:野田首相はよくやっている

  • 89%:自衛隊はよくやっている

  • 94%:東電は日本の現状に悪影響を与えている

  • 88%:東電の原発事故への対応は肯定できない

  • 25%:原子力への依存度は現状でいい


最後の原子力への依存度ですが、「減らすべき」が70%、「増やすべき」が4%となっています。

この調査ではメディアに対する日本人の見方も調査しているのですが、それによるとメディアが日本社会に対してポジティブな(良い)影響を与えていると考えているのは34%、ネガティブな(悪い)影響を与えているとする人は63%となっている。この数字は2007年の数字(ポジティブ:33%、ネガティブ:64%)とほとんど同じなのですが、10年前の数字がほとんど半々(48% vs 48%)であったことを考えると、日本人のメディア観が「かなりネガティブ(much more negative)」になっていることが分かるとしています。









▼この調査が行われたのが2012年の3月から4月にかけてであることを考えると、大飯原発の再稼働にゴーサインを出した野田さんへの評価が現在でも30%もあるのかどうか疑問ですよね。「将来は脱原発の方向へ向かうけれど、今回のところは再稼働で行かせてくれ」と言っているのではなく、「国民生活を守るために再稼働すべきだというのが私の判断だ」ということは、事実上今後とも原発でいきますと言っているのと同じことですから。▼日本人にとって悲劇的だと思うのは、主要政党である民主・自民の両方ともが原発オーケー路線を進んでいるように見えるということですよね。Pew Researchの調査で「原発への依存の度合いを減らすべきだ」と考える70%の人々がどこへ行けばいいのか分からないということです。前回のむささびジャーナルで紹介した、在英ギリシャ人が祖国を想って書いたエッセイの中に「この2大政党には国民に犠牲を呼びかけるような道徳的な権威がない(They do not have the moral authority to ask for sacrifices)」という言葉があったのを想いだしますね。

▼メディアに対する信頼感が4割にも届いていないという数字が出ているのですが、これは何が理由なのでしょうか?特に興味深いのは10年前にはほぼ5割であったという事実との比較です。10年前と現在で変化しているといえば大震災と原発事故しかない。しかしメディアへの評価が40ポイントにも届かないのは2007年でも同じことであって、昨年(2011年)3月11日を境に下落したというわけではない。

▼ここでいう「メディア」は “television, radio, newspapers and magazines” つまり主要な新聞であり放送であってインターネットではない。「固定電話」による世論調査に応じた人々(おそらく高齢)の間でさえもメディアに対する信頼感は高くない。10年前でさえも実は5割にも達していない。むささびジャーナルで何度か紹介ししたことですが、英国における「職業別信頼度」調査では「ジャーナリスト」は常に政治家と最下位を争っている。ただ英国の調査でいう「ジャーナリスト」には、あの大衆紙の記者やパパラッチカメラマンも含まれている。しかしPew Researchの言う日本のメディアにスポーツ紙、夕刊紙、週刊誌が含まれているとは思えない。これらのメディアが英国における大衆紙ほどの存在感を日本で有しているとも思えない。

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