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東京・神宮外苑。都民が『想定』する環境価値は「平均284億7600万円」。学生団体が、都民の「支払い意思」を確認する調査・分析で推計。アンケートでは開発反対が賛成の倍(RIEF)

2023-06-22 00:02:33

gaien002キャプチャ

 

 議論が続いている東京・明治神宮外苑の再開発問題で、同外苑の環境価値を、東京都民へのアンケートで推計した結果が26日、学生団体によって公表された。その結果、都民の「支払い意思」による同地の環境価値は「平均284億7600万円」と評価された。学生たちは、こうした環境価値の高い同地の環境保全のため、再開発計画の見直しを、東京都および再開発事業者の三井不動産に要望するとしている。

 

 (上図は、㊧が現況、㊨が再開発計画による変更=三井不動産資料:㊨の緑部分は既存樹木を伐採し若木を植樹が中心に)

 

 神宮外苑地区の環境価値を調べたのは、学生団体「Amamo」の若者たち。自然環境等の価値は金銭評価が難しいが、環境経済学で人々の環境への支払い意思額(WTR)を確認する手法を採用した。支払い意思の確認のため、東京都在住の都民3000人を無作為抽出で選び、アンケートで支払う意思を確認した。

 

 その結果、アンケート回答者の支払意思額の平均値は3872円、中央値は812円となった。この数字に調査対象である東京都の世帯数735万4402世帯をかけると、都民が評価する外苑の自然環境の環境価値は284億7624万4544円と推計できるとしている。(中央値の場合は、59億7177万4424円)

 

 再開発計画への賛否では、「どちらでもない」が39%、「開発反対」32%、「賛成」16%、「関心がない」13%。反対が賛成の2倍あった。また、再開発計画を全く知らなかった人が、3000人中1333人と半数近くを占めていたこともわかった。

 

外苑再開発計画への賛否 (3000人アンケートから)
外苑再開発計画への賛否
(3000人アンケートから)

 

 学生たちは「外苑地区は都民の財産であり、かつ日本国中のみならず海外からも毎年多くの観光客を迎え入れる神宮外苑の再開発が、十分な説明がなく進められていたことがわかった」と指摘。「どちらでもない」の回答が多かったことも、踏まえると、十分な情報が伝えられていないことが浮き彫りになった。

 

 解決法として、世界の歴史的な記念物、文化遺産等の保存を進めるユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の国内委員会(日本イコモス)が、開発による樹木の伐採を2本に抑えて、スポーツ施設の改修工事を進める案を提案している。同案への評価については、「同代替案を検討すべき」が39%、「わからない」34%、「今のままでいい」13%、「関心がない」14%で、代替案検討が最も多い。

イコモスの見直し案についての評価(アンケートより)
イコモスの見直し案についての評価(アンケートより)

 

 学生たちが外苑の環境価値を金銭評価するために活用した人々の支払い意思額をアンケートで推計する方法は「表明選好法・仮想評価法(CVM)」と呼ぶ手法だ。「この自然を守るために、あなたならいくら負担しますか」と聞き、その平均値を同地の環境価値とみなす。

 

 米国では国立公園の管理等に同手法が活用されている。また1989年に米アラスカ沖で座礁したタンカー「バルディーズ号」から大量の原油が海洋に流出し、沿岸部全体の生態系が打撃を受けた事件の裁判で、生態系の損害額算定に支払い意思額のCVM法が活用されたことが知られる。

https://www.mitsuifudosan.co.jp/