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東京・神宮外苑再開発問題。風致地区の指定を緩和して樹木伐採を許可した新宿区を相手に、周辺住民らが許可の取り消しを求める訴訟提起。外苑を巡る住民訴訟として2件目(各紙)

2023-07-27 01:14:09

キャプチャshinjyuku99

写真は、新宿区を相手に樹木伐採許可の取り消し訴訟を提起した原告たち=ハフポストより)

 

 各紙の報道によると、東京・明治神宮外苑の再開発問題で、外苑が立地する新宿区が、約3000本の樹木の伐採を事業者の三井不動産に対して許可したことについて、周辺の住民などが25日、同区を相手取り、許可取り消し等を求める訴えを東京地裁に起こした。原告は、外苑は長年区指定の風致地区だったのに、区が区議会や都市計画審議会に報告せずに規制の緩い指定に変更したのは、区の裁量権の逸脱だと指摘するとともに、樹木の伐採と高層ビルの建設により、地区からのCO2排出量が増大し、住民が基本的に保有する「CO2排出の被害を受けない利益」が侵害されるとしている。

 

 NHKやハフポスト等が伝えた。原告は、外苑周辺の住民や大学教授等5人。「新宿区の伐採許可は、違法な手続きをもとに出された」として、区に許可の取り消しと、1人当たり1万円余りの賠償を求める。

 

 外苑の再開発計画では、神宮球場とラグビー場を建て替えるほか、商業施設などが入る200m近いビルをはじめ、2棟の高層ビルを新たに建設する計画だ。開発事業主体の三井不動産から申請を受けた新宿区は約3000本の樹木の伐採を許可した。

 

 これに対して原告らは、外苑は約100年前に国民の寄付や奉仕活動によって作られた公園で、長年、自然的景観を維持する「風致地区」に指定されてきた。ところが新宿区は2020年、東京都の要請に基づき、神宮外苑の一部地域を、従来の規制の厳しい風致地区AもしくはB地域から、規制の緩いS地域に変更した。同地区の再開発を前提にした指定変更とされている。

 

 この指定変更について、区は区議会や都市計画審議会に報告せず、区自体の判断で実施した。そうした判断による変更が区民等にわかったのは2023年2月だったという。ハフポストによると、原告の山下幸夫弁護士は記者会見で、「たとえ新宿区長が決められることだったとしても、憲法は住民自治を保障しており、民主的なプロセスなしでの変更は社会通念に反した裁量権の逸脱だ」と述べた。

 

 同じく原告の新宿区住民の大澤暁さんも「文化的、景観的価値の高い場所の風致地区指定を、新宿区民にも、区民の代表である区議会にも伝えることなく変更し、その結果として樹木を伐採するのは、民主主義の倫理に反する行為だ」と強調した。

 同訴訟のもう一つの争点として提起した「CO2排出の被害を受けない利益」について、原告の環境活動家の山崎 鮎美さんは、新宿区の環境基本条例に「環境の保全は、区民が環境の恵みを享受するとともに、良好な環境が将来の世代に継承されるよう適切に行われなければならない」と書かれている点を指摘。「10代、20代の若者はただでさえ気候変動の不安を感じている。条例に書かれていることを実行し、将来世代が安心でき、希望を持てる街づくりをしてほしい」と訴えた。

 

 原告で建築家・東北芸術工科大学の竹内昌義教授は、「東京都は2030年のカーボンハーフを掲げて、できる限りCO2を出すのやめようと呼びかけ、新築の住宅には太陽光パネルの設置を義務化した。その一方で、こうした都心での再開発で大量に木を切るのは、ダブルスタンダード以外の何物でもない」と指摘した。

 

 同じく原告の東北大学大学院の明日香壽川教授も「この10年間でCO2の排出を減らさなければいけない時に、それと反することをやるのは明らかに温暖化対策を無視している」と批判した。

 

 外苑再開発をめぐっては、今年2月に、東京都に対しても事業の認可取り消しを求める裁判がすでに提起されている。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/jingu-gaien-shinjuku-lawsuit_jp_64be4d0ce4b053a7009237c1

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230725/k10014141931000.html