HOME12.その他 |地球全体で異常高温の「夏」がまだ続く。アフリカ南部のジンバブエの自然公園では水場が全て干上がり、ゾウやバッファロー達が「気候難民化」。隣国へ大量移動。人間生活と衝突も(RIEF) |

地球全体で異常高温の「夏」がまだ続く。アフリカ南部のジンバブエの自然公園では水場が全て干上がり、ゾウやバッファロー達が「気候難民化」。隣国へ大量移動。人間生活と衝突も(RIEF)

2023-09-19 00:55:25

Hwange001キャプチャ

写真は、Hwange National Parkのサイトから)

 

 世界中で観測史上、過去最高気温が続いたこの夏。暑さはまだ続くが、アフリカの大地も異常乾燥による水不足で、野生の動物たちが深刻な状況に陥っている。アフリカ南部のジンバブエにある世界最大の自然公園では、早すぎる乾季の到来による水不足で、ゾウやバッファロー等が水場を求めて国境を越え、隣国のボツワナに大量に「移住」する動きが起き、混乱を引き起こしている。「気候難民」ならぬ、「気候難象」だ。

 

 動物たちが水不足に陥っているのは、気候変動の影響だけではない。人間が豊かな地域を開発し、元々、水の乏しい地域を自然公園として、多くの動物たちを囲い込んできたという事情もある。人間が引き起こす気候変動の激化と、人間本位の自然保護制度との「不適合」の度合いが高まっている。

 

「早すぎる乾季」の到来で、水場が干上がってしまった
「早すぎる乾季」の到来で、水場が干上がってしまった

 

 ゾウやバッファロー等の大移動が起きているのはジンバブエにある世界最大の自然公園のワンゲ国立公園(Hwange National Park)。面積は14600㎢で東京都の6.6倍の広さを持つ。カラハリ砂漠の北部に位置し、元々、乾燥地帯として知られる。100種類以上の哺乳類と400以上の鳥類が自然のままで生息している。

 

 アフリカの同地域では11月から3月までが乾季で、雨はほとんど降らなくなる。ところが今年は、すでに8月から降雨が限られ、自然公園内にある動物たちにとって欠かせない水場が各地で干上がってしまった。今年は東太平洋の赤道付近の海温が上昇するエルニーニョ現象が発生し、その影響による気温上昇が世界的に起きている。アフリカでも同様の現象が早期に広がり、水を求めてゾウやバッファロー等が西側の隣国ボツワナに向けて、大挙、国境を移動し続けているのだ。

 

 ジンバブエ公園・野生生物管理機構のスポークスパーソンの Tinashe Farawo氏によると、「すでに多くの動物たちが、ワンゲ国立公園からボツワナに移動していることを確認している。ゾウやバッファローだけでなく、多くの動物が移動している。公園内の水場の大半はすでに干上がっている」と述べている。

 

水場を求めて「国境」を超えていくゾウたち
水場を求めて「国境」を超えていくゾウたち

 

 ボツワナに移動したゾウやバッファローたちは、野生地区以外の人間の居住地や牧草地等にも入り込んでしまう。そのため、現地の住民は家畜等を守るため、あるいはゾウ達を食べるために、殺すケースが続発しているという。また動物たちと接触した家畜が野生の病原菌に触れて感染症が広がるリスクも高まっている。住民たちが移住してきた動物たちを殺すのは、家畜を守る意味もあるという。

 

 ワンゲ国立公園は、元々、自然の河川がないところだ。公的機関や自然保護団体等が人工的に水をくみ上げて、公園内の水場等に供給しているという。一方で、水を求めて隣国に逃げ出した動物たちを、人間の事情によって殺すケースが多発していることについて、動物保護団体や環境NGO等は問題視している。特にゾウの場合、象牙目当ての殺戮も指摘されている。

 

 ボツワナは、すでに13万頭以上のゾウが生息している世界最大のゾウ人口で知られる。そこに世界で二番目にゾウが多いジンバブエ(6万5000頭強)から大量にゾウや他の大型動物たちが移住している。このため、動物たち自体も過密状態になっており、ストレスを高めている。ボツワナのSeTswanaという地域では、500頭以上のバッファローが現地の農民によって食用として殺されたと報じられている。

 

やっと見つけた水場は「ゾウで混浴状態」
やっと見つけた水場は「ゾウで混浴状態」

 

 国連の政府間気候変動パネル(IPCC)のレポートでは、南アフリカ地域は、地球の気温上昇によって、異常熱波が増大するリスクと、少雨が広がるリスクが集中する「ホットスポット」として確認されている。

 

 ジンバブエ、ボスニアの両国から、さらに近隣のアンゴラ、ザンビア、ナミビアの各国を含めた「Kavango Zambezi Transfrontier Conservation Area(KAZA) 」地域全体を対象とした最近公表の空中写真調査では、同地域全体でのゾウ人口は22万7900頭とされている。2016年の21万6970頭から1万頭以上、増えている。

 

 ゾウの人口増は、密漁等からの保護の監視が厳しくなったことが影響しているとみられる。一方で、水場だけでなく、生息環境は必ずしも良好とはいえない。しかし、これまでも関係国は、ゾウ等の生息数を管理するため、一定の間引きを行っている。

 

 ゾウやバッファローやその他の動物たちは、季節に応じて、このKAZA地域内を自由に移動して暮らしている。だが、動物たちの生息数に比べて、適正な生息環境は人間の都合によって限られている。昆明モントリオール生物多様性枠組みでは、陸上と海洋の保護区を30%確保する「30by30」の方針を打ち出した。だが、単に面積を確保するだけでは真の生態系維持とはいえない。動物たちの「気候難民化」はそのことを物語っている。

https://www.victoriafalls-guide.net/hwange-national-park.html

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-09-18/drought-drives-zimbabwe-s-biggest-elephant-migration-since-2019?srnd=green

https://www.herald.co.zw/low-water-supplies-push-wildlife-migration-to-botswana/