HOME12.その他 |ペットボトルの飲料水。製造工程で大量のナノプラスチックを含有。1㍑当たり11万~37万個。従来想定より10~100倍多く水道水を大きく上回る。米コロンビア大学研究チームが検証(RIEF) |

ペットボトルの飲料水。製造工程で大量のナノプラスチックを含有。1㍑当たり11万~37万個。従来想定より10~100倍多く水道水を大きく上回る。米コロンビア大学研究チームが検証(RIEF)

2024-01-12 18:16:38

FDAスクリーンショット 2024-01-12 185258

写真は米FDA(食品医薬品局)のサイトから)

 

 市販の1リットル入りのペットボトルの飲料水には11万~37万個のマイクロプラスチックあるいはナノプラスチックが含まれている、との研究結果が公表された。米コロンビア大学の化学・地球環境等の研究チームがこれまでの測定法の課題を解決し、より正確に測定した結果、従来の想定粒子数よりも10~100倍も含有量が多いことが分かった。検出されたナノプラスチックは、ペットボトルに入れる飲料水を浄化するプラスチックフィルターに由来するものが最も多く、製造工程で含まれるとしている。検証対象としたのは米消費市場で販売される3つの主要ブランドのミネラルウォーターだが、水質の問題ではなく、製造工程での含有が中心とみられるだけに、日本を含む他の国のペットボトル飲料水も同様の高含有量になっているとみられる。

 

 マイクロプラスチック、ナノプラスチックは、飲料水に含まれるほか、魚類等の体内等にも広く含まれていることが知られている。特にナノプラスチックは非常に小さいため、消化器官や肺を通過して直接、血流に入り、脳や心臓などの臓器に到達するとされ、人体への影響が懸念されている。

 

 今回の研究はコロンビア大学化学研究所属のNaixin Qian氏ほかの主に同大学に所属する研究チームが取り組んだ。研究成果については、8日付けの米科学アカデミー紀要(PNAS)に「Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics use by SRI microwsvcopy」のタイトルで発表された。

 

 海洋等に廃棄されたプラスチック廃棄物が海洋中で微細に分解されて形成されるマイクロプラスチックは大きさが5mm以下のもの。ナノプラスチックは1マイクロメートル(μm:1000分の1mm)以下の微粒子をいう。今回の研究で判明したマイクロ・ナノプラスチックのうち大半の90%は、微細なナノプラスチックだったという。従来の検出法では把握しきれなかった微細粒子を、研究チームが開発した新手法で検出できたことになる。

 

 ナノプラスチックは、マイクロプラスチックに比べてサイズが小さいため、人体に入りやすく、毒性が強いと考えられている。しかし、これまでナノプラスチックの検出には、ナノレベルの感度とプラスチック同定の特異性の両方に大きな分析上の課題があった。そこで、研究チームは、単一の粒子レベルでのマイクロ・ナノプラスチック分析を可能にする自動プラスチック同定アルゴリズムを備えたハイパースペクトル(SRS)イメージング・プラットフォームを開発した。

 

 同プラットフォームでは、高感度な狭帯域ハイパースペクトルイメージングによるスペクトル同定に際して、一般的なプラスチックポリマーの判定を確実に達成するために、データ駆動型のスペクトル照合アルゴリズムを考案し、導入した。同技術を用いて、消費市場で購入したペットボトル入りの飲料水に含まれるマイクロ・ナノプラスチックを検出した。

 

 その結果、主要な種類のプラスチックを検出し、同定することに成功した。マイクロ・ナノプラスチックの濃度は、ボトル水1㍑当たりで約2.4±1.3×(10の5乗)と推定された。マイクロ・ナノプラスチックの個数にして、11万~37万個となる。その約90%がナノプラスチックで、研究論文では「以前に報告されたペットボトル水中のマイクロ・ナノプラスチック存在量よりも桁違いに多い」と指摘している。

 

 検出されたプラスチックで種類別に最も多かったのは、水を浄化するプラスチックフィルターに由来すると考えられるナイロン。次いで多かったのは、ボトル自体の材料であるポリエチレンテレフタレート(PET)。残りの種類のプラスチックは、キャップの開閉時に水に混入するとみられている。つまり、ペットボトル入り飲料水の製造工程で大量のナノプラスチックが含有することがわかったとしている。ペットボトルを使わない水道水の場合、プラスチックの含有量ははるかに低いとされる。

 

 

 研究チームの一人、米コロンビア大学気候科学研究センター准教授のベイザン・ヤン(Beizhan Yan)氏はメディアに対して「ボトル入り飲料水に含まれるナノプラスチックを心配するならば、代わりに水道水などを検討するのは妥当なことだ」とコメントしている。ただし、ペット入り飲料水しかない時に、飲まないで脱水症状を起こすリスクはナノプラスチック入りの飲料水を飲むことによる潜在的な影響を上回る可能性があるとして、「どのような状況においても絶対に(ペットボトルの水を)口にしてはいけないと言っているわけではない」としている。

 

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2300582121

https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/bottled-water-everywhere-keeping-it-safe