HOME |国内の人の血液中から、ナノプラスチック初検出。「ナノプラが有害化学物質を体内に取り入れ、蓄積」の可能性。「プラ汚染+化学物質汚染」の連動を示唆。東京農工大教授らのチーム(各紙) |

国内の人の血液中から、ナノプラスチック初検出。「ナノプラが有害化学物質を体内に取り入れ、蓄積」の可能性。「プラ汚染+化学物質汚染」の連動を示唆。東京農工大教授らのチーム(各紙)

2024-03-23 22:57:27

スクリーンショット 2024-03-23 223758

写真は、海外清掃活動で集められた発砲スチロールのゴ=2020年12月、沖縄・石垣市で。共同通信)

 

 各紙の報道によると、東京農工大学の高田秀重教授らの研究グループは、国内の複数の人の血液中から、マイクロプラスチックの中でも超微細のナノプラスチックの粒子を検出した。人の血液中からのナノプラ検出例は、オランダで報告例があるが、日本国内では初めて。さらに研究グループが、検出対象者のうちの1人を詳細調査したところ、血液のほか、腎臓、肝臓などからプラスチックに転嫁する紫外線吸収剤やポリ塩化ビフェニール(PCB)等の有害化学物質が検出された。ナノプラが有害化学物質の体内取り込みを媒介している可能性が浮上したといえる。

 

 共同通信が20日付で配信した。環境中に放棄されたプラスチックごみが、日射や海洋等で粉砕・細分化されて直径5mm以下の粒子になったものをマイクロプラスチックと分類される。そのうち、直径が1μm(1000分の1mm)以下の超微細粒子をナノプラスチックと呼ぶる。

 

 マイクロプラやナノプラは、ペットボトルやレジ袋等の大量廃棄から生じるほか、ファストファッションの衣料品の廃棄等も発生源とされる。最近では、廃棄物だけでなく、ペットボトルの製造工程でボトルに入れる飲料水を浄化するプラスチックフィルターに由来して発生する事例も研究でわかっている。https://rief-jp.org/ct12/141926?ctid=

 

 高田教授らの研究グループは、2023年に検査用に採取して残った血液や組織11人分を分析した。検査用の検体は、筑波大学の「つくばヒト組織バイオバンクセンター」に保存されていた検体を、倫理ガイドラインに沿って提供を受けたとしている。

 

 検体のうち4人分の血中から、発泡スチロール原料等に使われるポリスチレンの超微粒子を検出した。検出量は血液1g当た40~550ng(ナノグラム : ナノは10億分の1)だった。同時に検出した紫外線吸収剤は、プラスチックの劣化を防ぐために使用される添加剤。PCBは着色に使う顔料に含まれる不純物の可能性が高いとしている。

 

 高田教授は「プラスチックの微粒子が有害化学物質を体内に運び込んでいる」とみている。同教授は、今回の検出量はわずかで直ちに健康に影響が出るレベルではないとしながらも、「これらの化学物質は環境ホルモンだ。摂取量が増えたり長期間蓄積したりすれば、生殖作用等に影響を与えることが懸念される」と警告している。

 

 ナノプラは、直径が大きいマイクロプラに比べ、粒子が小さい分、呼吸器や消火器を通じて血液中にまで入りやすい。マイクロ・ナノプラの健康影響について、世界保健機関(WHO)は2019年8月に公表した初の健康への影響についての報告書で、「現状では人体への影響はみられないが、将来的な潜在リスクに関してのさらなる研究の必要性」を指摘している。https://rief-jp.org/ct12/93002?ctid=

 

 ただ、WHOの同報告書は、新たに汚染状況や疫学調査を実施したわけではなく、既存の複数の研究結果を分析する形でまとめられた。同報告書に採用された研究成果では、ペットボトルや水道水などの飲料水1㍑当たりに含まれているマイクロプラの粒子は、0~1万個とされたが、今年1月に公表された米コロンビア大学の研究チームの分析では、市販の1㍑入りのペットボトルの飲料水には11万~37万個のマイクロ・ナノプラが含まれているとの研究結果が公表されている。https://rief-jp.org/ct12/141926?ctid=

 

 同研究では廃棄プラからのマイクロ・ナノプラの生成ではなく、ミネラルウォーター等のペットボトル入り製品の製造工程で、生成していると指摘している。検出量が最も多かったのは、水を浄化するプラスチックフィルターに由来すると考えられるナイロン。次いで、ボトル自体の材料であるポリエチレンテレフタレート(PET)。残りの種類のプラスチックは、キャップの開閉時に水に混入するとみられる。ペットボトル入り飲料水の製造工程で大量のナノプラスチックが人為的に含有されているわけだ。

 

 マイクロ・ナノプラは、飲料や食事を通じて体内に入るだけではない。英国のハル・ヨーク医科大学とヨーク大学の共同研究では、大気中に漂うマイクロ・ナノプラを、人間が呼吸を通じて人体の肺組織内に取り込み、同組織中に蓄積していることが判明している。肺組織から検出されたプラ物質は主に、自動車部品や繊維製品、容器、包装材料等に幅広く使用されているポリプロピレン、ペットボトル等のポリエチレン・テレフタラート等だった。https://rief-jp.org/ct12/124178?ctid=

tps://web.tuat.ac.jp/~gaia/research/works.html