HOME |神戸市で製造したミネラルウォーターから、水道水の暫定目標値の6倍のPFASを検出。隣接の明石市でも、水道に利用する河川で高濃度のPFAS検出。両市とも市民への情報開示は後手(各紙) |

神戸市で製造したミネラルウォーターから、水道水の暫定目標値の6倍のPFASを検出。隣接の明石市でも、水道に利用する河川で高濃度のPFAS検出。両市とも市民への情報開示は後手(各紙)

2024-07-07 00:11:25

スクリーンショット 2024-07-06 224042

写真は、明石川の河川水を浄水している明石川浄水場=朝日新聞より)

 

  各紙の報道によると、兵庫県南部の神戸市、明石市で相次いで、水道水の暫定目標値(1㍑当たり50㌨㌘)を大きく上回る難分解性化学物質のPFAS(有機フッ素化合物)が検出され、両市の市民らに不安を与えている。さらに5日には、神戸市内の企業が製造したミネラルウォーターから、暫定目標の最大6倍に相当するPFASが検出されたと報道されている。明石市の水道利用の河川からは、暫定目標値の最大92倍を検出した。

 

 朝日新聞等が報道した。それによると、明石市議会の辻本達也議員(共産)が神戸市に情報公開請求し、公開された資料を元に朝日新聞の記者が同市に取材した結果、PFASの暫定目標値を上回るミネラルウォーターが製造されていたことがわかった。同市は朝日新聞が取材するまで、同問題を公表しておらず、取材後も製造した企業名や商品名を明らかにしていない。

 

 同紙によると、神戸市の説明として、2022年12月、厚生労働省からの情報提供により、同市内で製造されたミネラルウォーターから水道水の暫定目標値を上回るPFASが検出されていたことがわかった。同市は23年1月と6月、複数ある同ウォーターの原水の地下水を検査したところ、1㍑当たり94~310㌨㌘のPFASが検出された。商品のペットボトルからは100㌨㌘程度が検出されたという。

 

 このため市は、同事業者に対応を要請。23年11月には、12月20日までに目標値以下へ低減させることと、低減できない場合は販売を停止するよう求めたとしている。市によると、企業側はPFASを除去する活性炭フィルターを設置して対応した結果、23年12月の検査では目標値以下に下がったのを確認したという。

 

(イメージです)
(イメージです)

 

 わが国では、PFASについて、水道法での水質の管理目標として暫定目標値が定められているが、同値は目標値までの削減を求める規制値ではない。さらにミネラルウォーターの場合は、水道水とは別に食品衛生法等で対応することが想定されるが、現状はPFASの制限については何の基準も定められていない。政府は5月下旬に、全国の水道水でのPFAS汚染の実態を把握するため、都道府県の担当部署や国認可の水道事業者などに対して水道水の全国調査を要請している。https://rief-jp.org/ct12/146492

 

 朝日新聞の取材に対して、神戸市健康局の丸尾登・生活衛生担当部長は「(水道法など)法律は異なるが、目安の数値があり、それを超えていた。全体の予防安全的な観点から、PFASの摂取量を減らすべきで、法律上の違反ではないが、そのままにしておくわけにはいかなかった」と述べ、ミネラルウォーターの製造企業に削減対応を求めた経緯を説明したという。

 

 そのうえで、丸尾部長は「どれだけの量で健康への影響が出るのか、科学的根拠に基づく基準があれば、われわれも対応しやすくなる。早く基準を作って頂きたい」と国に対応を求めた。情報公開請求した辻本議員は「ミネラルウォーターは水道水よりもきれいな水というイメージが先行しており、食品衛生法上の対応が遅れているのではないか」と指摘している。

 

 ミネラルウォーターについては、ペットボトルに入れる飲料水を浄化するためのプラスチックフィルターからマイクロプラスチックやナノプラスチック等の微細プラスチックが含有することが米コロンビア大学の化学・地球環境等の研究チームの論文で明らかになっている。市販の1㍑入りボトルの飲料水に11万~37万個の微細プラスチックが含まれる、と指摘されている。ナノレベルのプラスチックも、PFASも同様の微細な水準で、現状のペットボトルの製造プロセスを前提にすると、浄化は困難とみられる。https://rief-jp.org/ct12/141926

 

 一方、神戸市に隣接する明石市では、同市と神戸市の間を流れる明石川流域で明石市が行った水質検査で先月、国の暫定目標値を大幅に上回る最大92倍のPFASが検出されていたことが分かった。市によると、同川下流部にある取水場では希釈されて数値が大幅に下がり、さらに高度浄水処理なども実施しているため、飲み水としての安全性に問題はないと説明しているという。

 

水道水に利用するため明石市が河川水を取り込む明石川取水場=朝日新聞より
水道水に利用するため明石市が河川水を取り込む明石川取水場=朝日新聞より

 

 同市はこれまでPFASについて、浄水処理後の数値は公表している。しかし、原水として取水する河川水での含有濃度については公表対象にしていなかった。同市は市内に三つある浄水場のうち、明石川浄水場と鳥羽浄水場では、明石川の水と地下水を利用して上水として利用している。各浄水場では高度浄水処理をした後、各家庭等に配水している。

 

 同市水道局は20年2月からPFASを検査しており、明石川流域の原水の検査は、取水場と、明石川に合流している神戸市西区押部谷町の水路の2カ所で実施してきた。このうちの水路では、20年8月に1㍑当たり4100㌨㌘、23年2月には4600㌨㌘をそれぞれ検出した。今年2月にも1900㌨㌘を検出した。ただ、下流の取水場にいくまでに河川水で希釈され、高くても200㌨㌘程度までに収まるという。

 

 2021年に神戸市が同河川で実施した水質検査では、さらに高濃度の660倍のPFASが検出されていたことが、前述の明石市議会の辻本議員が神戸市に対して行った情報公開請求で判明している。それによると、21年12月、前述の神戸市押部谷町の明石川に合流する水路付近で検査し、3万3000㌨㌘を検出したという。しかし、同市は、これらの情報について市民には開示せず、同議員による情報公開請求でようやくデータが公表された格好だ。

 

 明石市の場合、取水場で、活性炭に吸着させたり、地下水とのブレンド等による処理で希釈化を進めており、市民に水道水として配水する段階では、PFAS濃度は、国の暫定目標値の半分以下にまで下がっているという。このため、市水道局は「飲み水として安全なので、安心して利用してほしい」と強調している。

 

  それでも市水道局は、明石川からの取水は、水量や水質が不安定だとして、今後、利用を取りやめる方針としている。25年度からは阪神水道企業団からの受水を開始し、明石川浄水場を廃止する。もう一つの鳥羽浄水場も、明石川からの取水量を大幅に減らし、28年度中に取水を完全に取りやめる方針としている。河川からの取水を行っている他の市町村の水道水の汚染はどうか、早急な把握が求められる。

https://digital.asahi.com/articles/ASS753FGGS75PIHB015M.html

https://digital.asahi.com/articles/ASS6M3QJSS6MPIHB014M.html?iref=pc_rellink_01

https://digital.asahi.com/articles/ASS753HRLS75PIHB008M.html

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202406/0017736370.shtml