HOME10.電力・エネルギー |気仙沼沿岸に計画の巨大堤防整備 観光に懸念、地元反発(河北新報) |

気仙沼沿岸に計画の巨大堤防整備 観光に懸念、地元反発(河北新報)

2012-08-10 14:22:46

kahoku20120810004jd
環境省の「快水浴場百選」=?=に4カ所が選ばれている気仙沼市で、東日本大震災後の防災対策として行政が進める海岸堤防計画に対し、観光面から懸念の声が出ている。巨大堤防が海水浴場の景観を損ねたり、砂浜を消滅させたりして観光客の人出に影響を及ぼしかねないからだ。住民の反発は根強く、施工する国や県は難しいかじ取りを強いられている。
 気仙沼市の離島・大島にある小田の浜は「百選」の中でも「特選」に入っている。震災で壊滅的な被害を受けたが、島民や全国のボランティアが清掃活動を続け、きれいな浜に戻った。
 7月21日には海開きもあり、今夏は県内唯一の海水浴場として再スタートを切った。その8日後、浜の関係者は思わぬ冷水を浴びせられた。震災前(標高4.3メートル)を大きく上回る11.8メートルの堤防を建設する計画が県から示されたためだ。
 大島は陸中海岸国立公園にも含まれ、近年は体験型観光にも力を入れている。海岸線に人工の巨大構造物が設けられれば、自然豊かな島のイメージに傷がつきかねない。
 気仙沼大島観光協会の白幡昇一会長は「美しい浜の風景は守らなければならない貴重な財産だ。自慢の浜を土足で踏みにじるような計画であり、断じて許せない」と怒り心頭だ。  一方、住民が「地域の宝」と口をそろえる気仙沼市本吉町の大谷海水浴場。やはり「百選」の一つだが、ここにも標高9.8メートルの海岸堤防を建設する計画が持ち上がっている。
 堤防は小田の浜と同じ土盛り式の傾斜堤で、一部が海側にせり出して既存の砂浜を埋める構造になっている。国は対策として人工的に海浜を造成する考えを示しているが、住民は実現を疑問視している。
 地元の自治会長の大内守雄さん(69)は「大谷海水浴場は地域の街づくりに欠かせない存在だ。せっかく砂浜が残っているのだから堤防でつぶすのではなく、自然のまま残す方策を探ってほしい」と話す。
 菅原茂市長は7月中旬の記者会見で「(堤防建設で)砂浜が戻らなければ問題だ」と語り、大谷海岸では堤防を陸側に移せるかどうかを関係機関と共に検討する考えを示している。ただ陸側移設には国やJRとの調整が前提になり、実現は未知数だ。
 堤防を施工する国や県は「堤防は発生頻度の高い津波に備える国の中央防災会議の提言に対応したものだ。これから地域に入って住民の声を聞くとともに、気仙沼市とも十分に意見交換していきたい」と話している。

[快水浴場百選]環境省が2006年、快適に泳げる全国の海や湖計100カ所を選定した。浄土ケ浜(宮古市)や小田の浜(気仙沼市)など総合的に評価が高い12カ所を「特選」とした。気仙沼ではお伊勢浜と大谷、小泉も百選に選ばれた。

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/08/20120810t12036.htm