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ベルギーの原子力規制庁長官が、退任会見で「原発は社会に受容可能ではない」と明言(FGW)

2013-01-07 13:41:50

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Belgium3715469114ベルギーの原子力規制庁(FANC)のトップの座にあり、国際的にも原子力発電に関する強い発言力を持っていたウィリー・ドクベーレ(Willy De Roovere)氏は、昨年末に退任した。退任に際して、 同氏は「われわれは、原子力エネルギーが常にリスクを抱えているという事実とともに生きていかねばならない。我々はこのリスクを社会が受容可能なものにできるか、という自問に答えねばならない。私自身の考えを言えば、もはや受容可能ではないと信じる」と語った。


 

ベルギーのFlandersNews.Beによると、ドクベーレ氏は、長年、ベルギー最大の電力会社(Electrabel)に席を置き、原子力発電に取り組んできた電力専門家で、その経験を買われて、国の原子力産業のウォッチドックであるFANCのトップに抜擢され、活躍してきた。FANCは、ちょうど日本の原子力規制委員会のような役割だ。昨年は、ベルギーの二つの原発で原子炉に亀裂が発見され、操業停止状態になっている。今年はこれまで再稼働停止状態が6年以上続いている他の原子炉について、政府に対して再稼働できるとのアドバイスを伝えるとみられる。

このように原発の評価は、難しい側面があるが、ドクベーレ氏は、基本的に今日の我々のレベルでは、原発を社会にとって受容可能なものとみることはできないとの否定的なスタンスを示した。その一方で、「原子力エネルギーのリスクを考えると、私は他の手段によるエネルギーの利用を好む。しかし、この選択の問題は議論が必要だろう。というのは、もしわれわれが原発を廃止し、中国が相しなかった場合、その差は大きな経済的影響となって現れるだろう」と指摘した。

ドクベーレ氏は、原発を技術的にマネージすることの難しさを認める一方で、こうした政治的課題に対してどう解決策を見出すのかという、より困難な課題の存在を指摘した。原発の是非論は、国際的なバランスがとれないと、政治・経済摩擦に発展する可能性があるということだ。WTO(世界貿易機構)などでも、貿易の自由化の議論だけではなく、 貿易にかかわる公平性、安全性の課題も真剣に議論しないと、技術的に受容できない原発を一国だけでは廃止できない、とのジレンマに陥るリスクもある。