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新方式のワイヤレス充電、普及は近い?(National Geographic) 携帯もスマホも “たこ足”から解放へ

2013-01-16 11:44:30

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wireless-charging-technology-cars-phones_62723_bigポケットに入れたまま充電できるスマートフォン、電源コードが無い薄型テレビ、地面のコードレスパネルから電力供給される自動車…。アメリカ、ボストン郊外にある目立たないビルで、「無線電力伝送」の技術を利用したさまざまな機器が開発されている。いずれ、たこ足配線で絡まる電源ケーブルの悩みを解消してくれるかもしれない。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究がきっかけで設立されたワイトリシティ(WiTricity)社の目的は、コンセントへ接続せずに電力供給できるまったく新しい仕組みの開発だ。同社の研究所では、電気コイルを使用して空中伝送した電気でさまざまな機器を動かしている。

◆ケーブルいらず

「カフェの椅子に座り、“電源ゾーン”にログインしたら、スマートフォンやノートパソコンを充電できる。そんな未来が数年後には実現するだろう」とパイクリサーチ社のエディトリアルディレクター、リチャード・マーティン(Richard Martin)氏は話す。同社は“スマートエネルギー”に特化した市場調査会社だ。「10年ほど前に登場したWi-Fi(無線LANの規格)のように普及すると予測している」。

マーティン氏によると、無線電力伝送の産業界での可能性は大きく、有線の電源供給が困難な電気自動車(EV)や無線センサーの分野で特に期待できる。また、従来の電源コードによる充電よりも、便利で環境にやさしい方法となる場合も多いという。「市場に大きな需要があり、新技術が待たれている」とマーティン氏は指摘する。

電源装置が壁やカーペットに埋め込まれ、家の中に電源コードがまったくない。ワイトリシティ社のCEOエリック・ガイラー(Eric Giler)氏が想像する未来だ。十分な容量の電源と小さな無線リピータ(中継器)があれば、この技術でスーパーやオフィスビルにも電力を供給できるという。

携帯電話用のワイヤレス充電スタンドなど、従来の方式は「電磁誘導」を利用していた。充電器側の送電コイルに電力を流して磁力を変化させ、機器側の受電コイルに電力を伝える仕組みだ。

「電動歯ブラシなどには非常に有効な方式だ。しかし、数センチの距離以上の送電はできないという弱点がある」とガイラー氏は説明する。

同社の方式でも磁界を利用しているが、電動歯ブラシや携帯電話とは異なり、「磁界共鳴結合(Resonant Magnetic Coupling)」で磁界を発生させる。この方式では数メートルの距離でも電気を伝送できるという。

「共鳴結合」の例は日常生活でもお馴染みだ。例えば、ブランコの揺れを大きくするには、揺れ方に合わせた「共鳴周波数」で足を振ると効果的だ。また、オペラ歌手がある音程で発声するとワイングラスが割れると言われるが、その音程の周波数はワイングラスの共鳴周波数と一致している。

ワイトリシティ社設立者でMITの物理学教授マリン・ソーリャチッチ(Marin Soljacic)氏は、2007年のある晩、妻の携帯電話の電池切れを伝えるビープ音で目が覚めた。そのとき、壁のコンセントから共鳴技術で電気を送れないかとひらめいたという。

同氏は特定の周波数で振動する2つの電磁共振器を使って実験。従来の電磁誘導よりかなり長い距離でも、磁界を通じて送電できることを発見した。研究成果は2007年後半に「Science」誌で発表し、間もなく、商用技術を開発するワイトリシティ社を創立した。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130115002