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石綿労災訴訟 東京高裁も国基準否定 大阪高裁に続き 国敗訴2例目(毎日)

2013-06-27 23:21:48

アスベスト訴訟で勝訴を喜ぶ原告団
アスベスト訴訟で勝訴を喜ぶ原告団
アスベスト訴訟で勝訴を喜ぶ原告団


勤務中にアスベスト(石綿)を吸って肺がんを発症したとして、埼玉県入間市の男性(61)が、労災と認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、男性勝訴とした1審・東京地裁判決を支持し、国の控訴を棄却した。奥田隆文裁判長は「国の労災認定基準は不合理」と判断した。同種訴訟の高裁判決は、同じく国側敗訴とした2月の大阪高裁(確定)に続いて2例目。東京、大阪、神戸の各地裁では計4件が係争中で、大きな影響を与えそうだ。

 男性は1973年から製鉄会社の技術者として働き、11年5カ月にわたり石綿を扱う業務に従事。2003年に肺がんになり労災申請した。

 厚生労働省は07年、労災認定について、従事期間が10年以上でも、肺に含まれる石綿小体(たんぱく質で包まれた石綿)の数が肺1グラム当たり5000本以上必要との基準を示した。男性の石綿小体は1000本台で、国は同年に不支給を決定した。

 この基準について奥田裁判長は「時間の経過で肺内の小体が消失することなどから合理性に問題がある」と指摘。男性に喫煙歴や遺伝的要素もないことから「肺がん発症は業務に起因し、労災と認められる」と結論づけた。【川名壮志】

 

 原告側の古川武志弁護士の話 労災認定を巡る法的な決着は付いた。行政対応の見直しが必要だ。

 厚生労働省労災保険審理室の話 関係省庁と協議した上で今後の対応を考えたい。

 ◇「国は速やかに基準の撤回を」患者と家族の会


 

原告の男性は勝訴判決後、「基準で泣いている患者はたくさんいる。労災申請から長かった」と涙をにじませた。労災と認めなかった国の基準に対しては「同じ病気でも人によって体の状態はまちまちなのに、肺の中の石綿の本数で一律に切り捨てるのは間違っていると確信していた」と語気を強めた。

 また、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子会長(65)は「厚労省は速やかに問題の基準を撤回すべきだ。過去に不認定となった患者の判断の見直しも求めたい」と話した。

 支援団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」は28日午前9時〜午後5時、電話相談「石綿肺がんに関するホットライン」(03・5627・6007)を開設する。【大島秀利】

 ◇解説 「被害者切り捨て」認定


 

アスベスト(石綿)被害が拡大する中、27日の東京高裁判決は、肺がん患者に対する国の労災認定基準が被害者切り捨てにつながっていると実質的に認めた。今年2月には大阪高裁でも原告が勝訴し、労災と認める判断が高裁レベルで相次いだことは、厳し過ぎると指摘される認定基準の見直しを国に強く迫るものといえる。

 石綿被害の指標とされる中皮腫による死者は右肩上がりに増え、2011年は1995年の2.5倍の1258人に上った。石綿肺がん患者はその2倍いるとみられるが、労災認定者は過去3年間、400人前後でほぼ横ばいで、救われない患者数は拡大している。

 患者支援団体は「国は未救済患者を減らすために効果的な策を打ち出せていない。司法判断を受け入れて基準を改めるべきだ」と指摘している。

 問題となった「切り捨ての基準」をこれ以上維持すれば、社会的な批判はさらに高まるだろう。【大島秀利】

 

http://mainichi.jp/select/news/20130628k0000m040064000c.html