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クジラ牧場 計画中 和歌山・太地町で世界初  反捕鯨団体は反対(東京)

2013-10-05 14:33:33

航空写真で森浦湾を示しながら、クジラの「牧場」構想を説明する三軒一高町長=和歌山県太地町で
航空写真で森浦湾を示しながら、クジラの「牧場」構想を説明する三軒一高町長=和歌山県太地町で
航空写真で森浦湾を示しながら、クジラの「牧場」構想を説明する三軒一高町長=和歌山県太地町で


捕鯨の町として知られる和歌山県太地(たいじ)町は今月中にも、クジラの「牧場」を造るための研究に乗り出す。将来は湾内に東京ドーム六個分の広さを確保し、五十~百頭を飼って観光と研究に役立てたい考えだ。実現すれば世界で初めてという。(吉岡逸夫)

この構想は、地元の森浦湾を網で仕切り、二十八万平方メートルの「牧場」を用意。鯨類のゴンドウやマダライルカなど七種類以上を飼育し、観光客がカヤックに乗って間近で見たり、一緒に泳いだりできるようにする。国際的なクジラの研究所をつくり、海外から研究者も招聘(しょうへい)する。

町は本年度、調査費として一千万円を計上。湾内で操業していた真珠養殖業者らとは既に漁業権の問題をクリアし、周辺の土地購入もほぼ終わっている。今月中にも、湾内に設置した二十メートル大のいけすに、三~五メートルの小型鯨類数頭を入れ、成育への影響などを調べる方針だ。五年後に一部オープンし、二十年後の完成を目指す。

三軒一高(さんげんかずたか)町長は「クジラの聖地にしたい。年間三十万人の観光客を呼べば採算は合う。自然を残し、少しずつ実績を積みながら進む」と話し、国や県の協力も得たいとしている。

◆「集団飼育は可能」鯨類研究所の大隅清治博士

大海原を動き回るクジラを、集団で飼育することはできるのか。

町立くじらの博物館名誉館長で、日本鯨類研究所(東京都中央区)顧問の大隅清治博士は「可能」と言い切る。「大昔、クジラのエサ場と繁殖場は一緒だった。温暖化でエサ場が冷たい所に移動し、広い範囲を移動するようになっただけだ」と解説する。

だが、反捕鯨団体も黙っていない。太地町のクジラ漁を監視するシー・シェパードのリーダーで、米国人のメルサ・シーガルさん(37)は「クジラを閉じ込めるのは許せない」と反対を表明。太地町は反捕鯨を訴える米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(二〇〇九年)の舞台になったこともある。

三軒町長は「世界中から観光客を呼ぶ。来てみたら『いい所や』と分かると思う」と意に介さない。水産庁の担当者は「応援したい気持ちはあるが、魚やイカといった大量のエサをどうするのかや、生態系の問題など、調査の積み重ねが必要。時間はかかるでしょうね」と話している。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013100590135712.html