HOME |環境省 水俣病基準見直さず 手足の感覚障害 単独で「補足」として認定へ(東京) |

環境省 水俣病基準見直さず 手足の感覚障害 単独で「補足」として認定へ(東京)

2014-01-11 19:01:23

”さじ加減”行政の継続では、患者・住民の不信感はぬぐえない
”さじ加減”行政の継続では、患者・住民の不信感はぬぐえない
”さじ加減”行政の継続では、患者・住民の不信感はぬぐえない


水俣病認定基準について、環境省がまとめている通知案の内容が判明した。同省は基準そのものの変更はせず、通知を認定審査のための「補足」と位置づけており、基準の抜本的見直しを求めていた被害者側からは「一方的だ」「誠実に検討していない」と反発の声が上がっている。


 通知案は、患者認定を手足の感覚障害だけでも可能としており、国が基準運用の具体的な在り方を示すのは初めて。最終調整の上で、近く関係自治体に伝える。




 一九七七年に出された現行基準では「手足の感覚障害と他の症状との組み合わせ」が原則条件だが、最高裁は昨年四月、感覚障害しかなかった熊本県水俣市の女性(故人)を水俣病と認める判決を言い渡し、環境省は基準運用の在り方を検討していた。




 通知案では、症状の組み合わせがなくても、有機水銀の摂取状況や症状、因果関係の有無を総合的に検討することで水俣病と認定し得ると明記。




 さらに検討の際には、摂取時期や食生活、汚染された魚介類の入手方法を確認した上で、体内の水銀濃度や居住歴、家族歴、職業歴を確認する。摂取から発症までどの程度経過しているかや、症状から考えられる他の原因との比較もした上で判断するよう求める。




 現行基準では、摂取時期と発症時期との関係は明記していないが、通知案では「通常一カ月程度、長くても一年程度まで」とし、時期が近くない場合は因果関係がある可能性が低くなるとの見解を示す。




 摂取歴の確認の際は、公的な書類以外でも、具体的な情報が記載されているものであれば客観的資料とすることも示す。また、過去に現行基準で実施した認定処分の再審査はしないことも盛り込む。




 現行の認定基準では、症状の組み合わせがなくても「総合的に検討する必要がある」としているが、熊本県によると「総合的検討」で水俣病と認められたのは県内で四件しか確認されておらず、いずれも感覚障害単独の症状ではなかった。

 




<水俣病と認定基準> 熊本県水俣市のチッソ水俣工場の排水に含まれていたメチル水銀が八代海(不知火海)に流出し、汚染された魚介類を食べた住民らが手足の感覚障害や視野狭窄(きょうさく)などを訴えた。1974年に医療費などを支給する公害健康被害補償法が施行されたが、旧環境庁が77年に「感覚障害など複数の症状」を原則条件とする認定基準を通知、申請棄却が相次いだ。昨年4月の最高裁判決は「感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的実証はない」として、行政判断より幅広く水俣病患者を認定。同10月には国の公害健康被害補償不服審査会も最高裁判決を踏襲し、感覚障害だけで水俣病と認める裁決を出した。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014011102000231.html