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安倍首相、憲法9条改正へ早くも意欲。「国民の生命守る」と。後藤さんらは守れなかったが、9条を改正していれば守れたのか(FGW)

2015-02-04 00:26:19

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abeelection無題私たち日本人は、まさに曲がり角に立っているようだ。多くの日本国民の一縷の期待もむなしく、イスラム国に拘束された後藤健二さんが惨殺された。日本政府は救出活動に失敗したが、安倍晋三首相は3日の参院予算委員会で、自衛隊の海外派兵を実現すべく自民党憲法改正草案に沿った9条改正に意欲を示した。一方、市民の呼びかけによる「憲法9条にノーベル平和賞を」目指す市民活動が今年も始動した。

 

安倍首相の発言は国会での質疑で、保守系の野党議員が、後藤さん,湯川さんの人質事件を念頭に、外国で拘束された日本人を自衛隊が救出できるよう、憲法9条の改正を求めたことへの答弁。「自民党は既に9条の改正案を示している。なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」と述べた。

 

聞きようによっては、自衛隊派兵が現行憲法で認められていないので、後藤さんらを救出できなかった、と述べたようにも受け取れる。ただ、すでに報道されているように、二人が拘束された情報が早くから政府に伝えられていたのに、外務省も官邸も対応は極めて遅かった。欧米のメディアなどが指摘するように、「自国の国を救おうとしない政府」との印象が広がっている。nobelprize16410_761267440613852_8475731460310850742_n

また、当初のイスラム国からの身代金要求には、「全く払うつもりはなかった」と菅官房長官が明かしたことも物議を呼んでいる。身代金支払いの是非は、各国でも議論のあるところだ。ただ、菅官房長官の発言が、「現政権の方針」ならば、国民に対して明確に伝えるべきだろう。「日本政府は、国民の皆さんが人質にされても、身代金はびた一文払いません。払わなくて殺されても責任は負いません」と。

憲法9条が改正され、自衛隊派遣が可能になると、こうした問題は解決するのだろうか。安倍首相の発言によると、「9条改正は国民の生命と財産を守る任務を全うするため」ということだから、身代金は払わないが、二人の救出のために、自衛隊が派兵されるのは間違いないだろう。派兵された自衛隊は二人を奪還するために、ヨルダン軍やイラク軍などと共同でイスラム国に対して攻撃をすることは、憲法に沿うものであり、日本国の役割ということになる。

しかし、米軍の空爆、地上戦でのイラク軍やクルド軍などと交戦を続けているイスラム国を、打ち破り、二人を見事奪還できただろうか。戦果を挙げるにはいったい、何万人の自衛隊員と武器を投入する心づもりなのだろうか。仮に、二人を救出したとして、「ハイ、さよなら」と撤収できるとは思えない。「任務を全うするため」には、戦火を交えたイスラム国との長期にわたる交戦が続くとみるのが普通だろう。

その結果が、日本国と日本人の平和を守ることにつながれば、それもやむを得ないとの判断かもしれない。だが、果たしてこうした武力による打開で、日本が、現地の中東地域に平和を築けるのだろうか。もし武力が解決策ならば、これまでの欧米と中東諸国の対応で活路は拓けているはずだ。いや、日本がそうした「有志連合」に加われば、千人力で事態を打開できるということか。自衛隊の人たちの自信のほどを聞いてみたい。

後藤さんたち二人の犠牲を「前提」としたかのような憲法改正論議と首相jの前のめり発言は、軍事的にも非合理で、本気で国民を救出するために語っているとは、思えない。こうした展開の中で「だから9条改正」と安易に口を開くから、議論が軽くなり、浅くなってしまう。しかも、もっと残念なことには、そうした軽さ、浅さを、首相および官邸周辺が感じていないという点にある。

イスラムの理念と、欧米社会との『文明の衝突』が、イスラム国問題の根底にあるとすれば、日本が有志連合の「遅れてきた一兵卒」として登場することで衝突を回避することはできまい。これまではアリバイづくり気味のところもあったが、日本が従来から主張し、実践してきたような「日本らしい人道支援」をさらに進めて、「文明の和解」のために、汗をかく役割を本気で担う覚悟をとれるのか、という分かれ目に立っているように思える。

政治が空虚な憲法議論と、安物の「愛国主義」をもて遊ぶかのようなやりとりをする中で、市民たちは実直に再び動き出している。戦争放棄をうたう憲法9条を守るだけではなく、戦火が広がる世界に9条の精神を広げようという運動だ。「憲法9条にノーベル平和賞」実行委員会(事務局・相模原市南区、石垣義昭共同代表)は先月末、昨年に続いてノルウェーのノーベル委員会へ推薦状を送った。昨年は推薦状は受理されたが、受賞はならなかった。

平和賞の推薦人になれるのは国会議員、大学教授、過去のノーベル平和賞受賞者ら。実行委によると今回は初めて、国会議員61人が推薦人に名を連ねているという。不毛の国会議論の一方で、この国の歴史と未来、さらに世界の将来を見据える政治家が、まだ国会にこれだけはいるということだ。

仮に、9条を守ってきた日本人に平和賞が与えられたとしたら、日本と日本人に求められる役割は大きい。戦争放棄と平和の樹立を、日本が先頭に立って推進することが求められるからだ。実行委員会の石垣共同代表は、「今年こそ受賞して日本国憲法の平和主義を世界に広めたい。『イスラム国』を含め憎悪が憎悪を生む悪循環を断ち切って信頼関係を取り戻す、ぎりぎりのところにきている」と話しているという。

 

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