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リスクと向き合う:「食」の周辺 水源の森、群がる外資 水を守れ、国会動く 超党派で基本法案提出へ(毎日)

2012-02-20 11:54:21

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国内の水資源を保全するため、民主、自民、公明など超党派の議員連盟が水循環基本法案(仮称)を議員立法で今国会に提出する。外国資本による水源地の森林買収が進んで大量取水も懸念されており、地下水を「国民共有の貴重な財産」と位置づけ、政府や自治体に規制を促す。飲用水の確保が世界的課題となる中、日本の水の安全保障に向けた取り組みが動き出す。

 環境省の名水百選に指定された湧き水を育む北海道の羊蹄(ようてい)山。北西のふもとに広がる倶知安(くっちゃん)町で、中国・香港の企業が08年、57ヘクタール(東京ドーム約12個分)の森林を買収した。1月下旬、町道から分け入ったところにある問題の森林は深い雪に覆われたまま、手つかずで放置されていた。

買収は北海道の調査で10年6月に明らかになり、道は香港企業に文書で目的を尋ねたが、なしのつぶてだという。地主から土地を買い上げ、香港企業に転売したブローカーの登記上の住所は、札幌市の看板もないマンションの一室。欧米系とみられる名前の代表者にメールで取材を申し込んだが、回答はなかった。

 「通常の10倍以上の買い取り価格だったので売ったが、使用目的は知らされていない」。売却した地主の一人は説明する。倶知安町の担当者は「地下水脈に影響がないよう管理してくれればいいが」と不安げに語った。

 外資が06~10年に取得した日本の森林は、国土交通省と林野庁の確認分で1道4県の計約620ヘクタールに上る。うち97%が北海道に集中し、中国人にスキーリゾートとして人気がある倶知安町と隣のニセコ町で買収が目立つ。

森林は地下に水を蓄える貴重な水源。地下水をくみ上げる権利は土地の所有者にある。人口増に伴い世界の水使用量は95年の3751立方キロメートルから25年には5138立方キロメートルに増えると予想される。うち、過半数を占めるアジアは95年の2157立方キロメートルに対し、25年が3104立方キロメートル。道議会では「買収は大量取水が目的かもしれない。所有者の実態すら分からないのは問題」と懸念が噴出した。

 こうした動きなどを受け、超党派の水制度改革議員連盟(代表・中川秀直自民党元幹事長)は、水の専門家を交えて法案作成を進めた。今月まとめた骨子素案では、地下水を含む水資源の公共性を明記。政府が水の適正利用や維持について基本計画を定めて法整備や財政措置を講じ、自治体も適切な利用規制を進めることを盛り込んだ。

 水関連行政が複数の省庁にまたがることも問題視し、内閣に水循環政策本部を設置するとしている。議連事務局長の森山浩行衆院議員(民主)は「個別の規制は水循環政策本部で検討したい」と語る。議連の幹部は7党の議員で構成されており、基本法が成立する可能性は高い。

http://mainichi.jp/life/food/news/20120220ddm001040056000c.html