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「残さず食べなさい」が世界を救う=食料廃棄量減らす必要(Reuters)

2012-03-16 16:21:17

乳幼児支援センターで食事する子どもたち(2009年4月9日、インド・ガンジー村)
 【シカゴ14日ロイター時事】出されたものを残さず食べても、飢えに苦しむ子どもたちを直ちに救えないかもしれない。しかし、この「残さず食べなさい(Clean your plate)」という母親たちが昔から勧めてきた助言が世界中で順守されれば、生産から消費に至るまで食料廃棄物を減らし、環境改善に役立つほか、増え続ける世界人口に食料を行き渡らせるのを容易にする可能性がある。

乳幼児支援センターで食事する子どもたち(2009年4月9日、インド・ガンジー村)




 客観的なデータはまだ収集中だが、ロイター通信が今週米シカゴで開催した食料農業サミットに参加した専門家らは、世界で生産される食料のうち30~50%が食べられることなく廃棄されていると推計している。

 自然保護団体の自然資源防衛評議会(NRDC)によると、米国人は平均で毎月33ポンド(約15キログラム)、金額にして40ドル(約3400円)相当の食料を廃棄している。これは1年間に約400ポンドの食料を捨てていることを意味し、オスのゴリラ1匹と同じくらいの重量だ。NRDCは4月に食料廃棄物に関する報告書を出す。

 米農務省は、鶏卵は23%、農産物についてはそれ以上が捨てられていると推測している。

 メーン州サウスバーウィック在住の3児の母、エスター・ゴーブさんは「野菜や果物がまだ(冷蔵庫などに)あることを忘れてしまって、週末にそれらを捨てる羽目になることが多かった」と述べ、「今は以前ほど野菜や果物を買わなくなった」と語った。

 しかし、食料廃棄物が影響を及ぼすのは家庭の台所にとどまらない。

 農業の水の使用量は最も多く、エネルギーや化学物質の消費量も多いほか、生産、流通、それに埋め立て地での腐敗の過程で排出される温室効果ガスも多い。専門家は廃棄物を減らすのは、環境への負荷を軽減する一番シンプルな方法だと指摘している。廃棄物が減ると、農家にかかるプレッシャーも軽減される。世界人口は現在70億人近くだが、2050年には90億人になると予想されており、農家にかかるプレッシャーは大きくなると考えられる。

 NRDCの専門家デーナ・ガンダース氏はロイター通信のサミットで「農業がいくら持続可能だとしても、食料が消費されないのであれば、持続可能ではないし、資源の良い利用法だとは言えない」と述べた。

先進国では、まだ食べられる野菜や果物が、小売業者の販売基準に合わない、家庭の冷蔵庫で腐ってしまった、またはレストランで食べ残されたといった理由で捨てられている。

 途上国では、道路の状態が悪く、冷蔵施設がないといった理由で、多くの食料が市場に到着するまでに腐ってしまうことが問題になっている。

 非政府団体(NGO)の「フード・アンド・ウォーター・ウォッチ(食と水の監視団)」の調査責任者パトリック・ウドール氏は、食料価格が高いことも問題だと指摘し、その理由として生産された食料を買えない人々がいることを挙げた。同氏は「生産を大幅に増やさなければならないという状況ではない。食料価格が高騰して世界中で暴動が起こった2008年でさえも、世界中に行き渡らせるのに十分な食料があった。値段が高すぎただけだ」と述べた。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012031500382?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0