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土地所有者、環境保護局の修復命令で提訴可能=米最高裁(Reuters)

2012-03-23 13:59:01

米連邦最高裁判所(10年10月1日、ワシントン)
【ワシントン21日ロイター時事】米連邦最高裁は21日、連邦政府が水質浄化法(CWA)に基づいて出した土地修復命令について、その土地の所有者が民事訴訟を提起できるとする判断を下した。この判決は、土地を保有する個人や企業団体などの主張を支持するもので、環境保護局(EPA)の主要権限を大幅に縮小することになる。

米連邦最高裁判所(10年10月1日、ワシントン)




 連邦政府は、EPAの命令に従わずに高額な罰金を伴う恐れのある強制執行措置に直面しない限り、個人ないし企業は裁判では争えないという立場を示していたが、最高裁判事らは全会一致で政府の見解を否定した。

 訴えていたのはアイダホ州在住のサケット夫妻。同夫妻は、同州プリーストレーク近郊に新たな別荘を建設するため、湿地を土と岩で埋めた。これに対してEPAは2007年、湿地を元に戻すことと、別荘の建設を中止するよう命じた。夫妻は別荘を建てる土地には湿地が含まれていなかったと主張、裁判所の公判なしにEPA命令順守を強いられたとして提訴していた。

 米商工会議所、全米製造業者協会、全米住宅建設業者協会、それにゼネラル・エレクトリック(GE)が同夫妻を支持した。GEはEPAの順守命令に対して同夫妻と同様な申し立てをしている。

 EPAは現在、多くの共和党議員から厳しい批判にさらされている。共和党議員らはEPAが過去数十年間で最も野心的な大気汚染規制を発表したとし、執行措置においても高圧的になっていると批判している。

 最高裁のアントニン・スカリア判事は、同夫妻が行政手続法の下で、EPAの命令に対する民事訴訟を提起できるとの結論を出した。同判事は、EPAの土地修復命令は最終的なもので、しかも夫妻は多額の罰金を支払わなければならない恐れがあるため、民事訴訟を起こす以外に適切な解決法がないと述べた。その上で、水質浄化法はそうしたEPA命令が裁判で審議されることを阻止していないと指摘した。

 水質浄化法によると、同法に違反した場合、1日当たり最大3万7500ドルの罰金が科されるほか、EPAの順守命令に違反した場合は1日当たり最大3万7500ドルが追加で科される。

 EPAは年間約3000件の順守命令を出しており、水質浄化法など環境関連法違反者に対し、環境に有害な行動をやめ、その行動がもたらした全ての損害を修復するよう義務付けている。

 最高裁の今回の判決は連邦控訴裁(高裁)の判決を覆したことになる。連邦高裁は、EPAが強制執行措置に出て、しかもEPA自身に有利な裁判所判断を求めて以降でない限り、EPA順守命令は裁判対象にならないとの判断を示していた。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012032200439