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低コストで海水から淡水を生成する技術開発。太陽熱をカーボンナノチューブで効率吸収。豪モナシュ大学の研究チーム(RIEF)

2019-07-29 14:36:20

 

 海水から淡水を生成する方法としては、海水を蒸留するか逆浸透膜を活用する方法が知られている。新たに太陽熱を利用し、カーボンナノなのチューブ等で作成したデバイスで真水を作り出す海水淡水化システムを、豪モナシュ(Monash)大学の研究チームが開発した。カーボンナノチューブの高い吸光度で太陽熱を利用、低コストで純度の高い水と塩の分離化が可能になるという。

 

 研究チームはモナシュ大学のYun Xia研究員らのチーム。研究成果は、最新のEnergy & Environmental Sceinceに掲載された。https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/EE/C9EE00692C#!divAbstract

 

 気候変動や人口増加に伴って、水資源の安定的な確保は、世界全体での重要な課題となっている。国連の持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる目標の一つでもある。水資源不足を解消する手段の一つとして、海水淡水化や廃水の再生利用の普及が各地で進められている。ただ、多くの手法は、処理に大量のエネルギーを必要とする課題がある。

 

豪ビクトリア州にあるモナシュ大学
豪ビクトリア州にあるモナシュ大学

 

 研究チームは、自然エネルギーの太陽熱を活用し、海水から塩分をほぼ100%取り除いて、低コストで真水を生成する新たな海水淡水化システムを開発した。海水を蒸留する手法は現在もあるが、基本は大量のエネルギー投入が前提だ。また現行の蒸留手法は、表面の塩分濃度によって蒸発プロセスが妨げられ、生成される水の質に影響をもたらす課題もある。

 

 研究チームは、水と塩の分離をスムーズに進めるため、光を吸収するカーボンナノチューブの層と親水性の高い濾紙を使った円盤形のデバイスを制作した。直径1mmの綿糸を通水路として、塩水をこの円盤に注入して中心にまで移動させると、濾紙が真水をとらえながら、分離した塩を円盤の縁に押しやる仕組みだ。映像でみると、塩がモコモコと湧いて出るようにみえる。

 

 カーボンナノチューブの吸光度は太陽スペクトル全体の94%で、光に当てると円盤の温度が直ちに上昇する。円盤が乾いていれば25℃から50℃まで、湿っている場合でも17.5℃から30℃まで、いずれも1分以内に温度が上昇する。円盤の縁に残留する塩の結晶化を適切に制御すれば、真水を生成しながら、製塩することも可能になる。

 

 研究チームがオーストラリア南部ラセピード湾の海水を使った実験では、600時間以上にわたって、蒸気を発生させながら塩を生成し続けることに成功した。同技術は、海水淡水化のみならず、産業廃水の無排水化(液体廃棄物を施設外に排出しないこと:ZLD)や汚泥脱水などにも応用できるという。

 

 通常の淡水化装置では大規模なプラントが必要だが、この円盤形のデバイスは小規模で、電力インフラの乏しい国や地域でも、太陽熱を使って、清潔で安全な真水を低コストで海水から効率的に生成できる。低コストグリーン技術と位置づけられる。

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/EE/C9EE00692C#!divAbstract