ドイツ政府、昨年末に稼働延長した原発3基を今月15日に停止と表明。脱原発完了へ。「(残るリスクは周辺国の)老朽原発の事故リスクと軍事標的化のリスク」と指摘(RIEF)
2023-04-04 15:17:01
(写真は、今月15日に稼働停止をする南部のNeckarwestheim原発2号機の様子=Clean Energy Wireより)
15日に稼働を停止するのは、南部のIsar原発2号機と、同Neckarwestheim原発2号機、北部のEmsland原発。いずれも昨年末で稼働停止の予定だったが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う冬場のエネルギー供給確保のために、3カ月の延長期間を設けていた。3原発の稼働停止に対して、ドイツ政界では、野党のキリスト教民主同盟(CDU)や、連立政権を構成する自由民主党(FDP)等がさらなる稼働延長を求めたが、シュルツ政権は予定通りの一時的延長で終止符を打つことを決めた。https://rief-jp.org/ct13/133626 https://rief-jp.org/ct13/129332?ctid=
Lemke氏は記者会見で同政権の方針を示したうえで「技術の時代は終わった」と語った。原発の稼働延長で補ったエネルギー不足に対しては、今後、ロシアからの供給が途絶えた天然ガスについては調達先を新たに確保し、再エネ発電の拡大を進めることでカバーできるとしている。
同氏はさらに、この間のエネルギー危機下において、ドイツはフランス等の原発発電国に対し、国内での再エネ発電での電力を過去最大量の輸出を続けたと明らかにし、原発は必ずしもエネルギー危機に対して自動的に安全性を供給するものではないとも強調した。
また「ドイツは安全な場所に変わる」と指摘する一方で、「老朽原発の存在が欧州にとっての最大のリスク継続の一つだ」とも述べた。日本では原発の稼働期間を60年に延長する法制化を進めているが、同氏は「(ドイツの原発廃止後も)原発事故のリスクは完全に回避されるわけではない。周辺国(フランスやベルギー等)での老朽原発の存在のほか、エネルギーインフラの事故リスク、ウクライナ戦争で明らかになった原発への軍事攻撃のようなこれまでは『想定しなかった原発事故シナリオ』が浮上している」と指摘した。
同氏の指摘は、今現在の日本の原発政策の課題を言い当てているようでもある。日本政府は、老朽原発の稼働期間を一律で60年にまで延長しようとしているほか、北朝鮮のミサイル発射が頻繁に日本海に向けて行われ、さらに中国との緊張拡大が続く中で、日本全体の沿岸部に50基以上の原発を配置したままという「無防備」な対応をとっている。
ドイツは東京電力福島第一原発事故を起こした日本の実態をみて、脱原発を掲げ、遂に実践する。一方の事故当事国の日本では、間一髪だった当時の原発事故への反省は、その後のエネルギー政策にほとんど反映させず、従来以上の原発リスクの持続・拡大を続けているように映る。政治、行政を含めて、危機意識の欠如、エネルギー転換の決意不足を改めて露呈する形だ。
ドイツ自体も原発の稼働停止で「めでたくゴール」というわけでもない。これまで約30基の原発の稼働を停止ししてきたが、それらの原発から排出された使用済み核燃料廃棄物の最終処分には今後数十年の期間が必要になる。Lemke氏は「この仕事(使用済み核廃棄物処理)は今後、何年間をかけてものチャレンジングな仕事となる。ドイツはこれまで約60年間にわたって原発を使用し続けてきた。ほぼ3世代が同原発の電力を享受したことになる。今後、核廃棄物の処理のために約3万世代がその影響を被ることになる」とも述べた。
ドイツも使用済み核廃棄物の最終処分場の確保を巡っては難航を極めている。同氏は「非常に困難な仕事だ。しかし、避けられない仕事だ」と決意を新たにした。
脱原発以後のドイツのエネルギー供給の軸になるのが、再生可能エネルギーだ。ドイツ再エネ連盟(BEE)は、政府の原発稼働停止方針を受けて、「脱原発の完了は、エネルギー産業からみても、フィージブル(可能)であり、かつ必要なことだ」とのコメントを出した。BEEは特に、原発の事故リスクの問題にとどまらず、原発による発電はコストが高く、再エネ発電に対して経済的な競争力を伴わない点と、再エネのバックアップ電源としても非常に柔軟性を欠く点を指摘している。「原発の時代」は終わっているのである。