HOME13 原発 |南太平洋の「ソロモン諸島」のソガバレ首相。国連演説で日本の福島原発からの汚染処理水の海洋放出を強く批判。「(日本が)安全というなら、日本国内で保管すべきだ」(RIEF) |

南太平洋の「ソロモン諸島」のソガバレ首相。国連演説で日本の福島原発からの汚染処理水の海洋放出を強く批判。「(日本が)安全というなら、日本国内で保管すべきだ」(RIEF)

2023-09-23 23:54:57

Soromon001キャプチャ

 

   南太平洋のソロモン諸島のマナセ・ソガバレ(Manasseh Sogavare)首相は22日、国連総会で行った演説で、日本政府が東京電力福島第一原子力発電所の汚染処理水を海洋放出したことを強く非難した。同氏は、日本の処理水の海洋放出に「愕然とした(apolled)」と述べ、ソロモン諸島にも影響があると警告。「この放射性廃水(nuclear waste)が安全なら、日本国内で保管すべきだ。海洋投棄したという事実が、(廃水が)安全ではないことを示している」と指摘した。

 

 同首相は、演説の中で、太平洋地域での核使用、同配備等を強く非難し、「核のない太平洋」の確保を求めた。同提言に続いて、日本のALPS処理水の海洋放出問題に触れ、「愕然とした」とし、国際原子力機関(IEAE)のアセスメントレポートについても、「『inconclusive(決定的なものではなく)』で、『incomletely(不完全で)』『bias(偏りがある)』が残っている」と指摘した。

 

 そのうえで、「日本の行為は国境と世代をまたいで潜在的な影響を与えるものであり、世界の信頼と団結に対する攻撃だ」として、日本に対して海洋放出の「即時中止」と、代替策への切り替えを求めた。日本の処理水海洋放出に対しては、中国が強く反発し、国際問題化しているが、国として正面から処理水放出に反対を表明したのは、ソロモン諸島が中国に続き2カ国目といえる。

 

 同氏による日本の処理水海洋放出批判に対して、国連日本代表部の志野光子次席大使は答弁権を行使し、「海洋放出について日本は、科学的な根拠に基づき国際社会に説明を行ってきた。日本政府は人体や海の環境を脅かす水の放出は許可していない」と反論した。

 

国連日本代表部の志野光子次席大使
国連日本代表部の志野光子次席大使

 

 ソロモン諸島は、近年、中国との連携を深めており、今回のソガバレ首相の日本批判発言も、中国の処理水放出反対の主張に呼応するものとの見方も出ている。ソガバレ首相は、演説の中で7月に習近平国家主席と会談したことに触れ、巨大経済圏構想「一帯一路」を称賛した。

 

 太平洋諸島では、戦後、米国やフランスによる核実験が繰り返した影響が今も残っているところが少なくなく、日本人が思う以上に、核廃棄物や放射能汚染への懸念が強い。米国は1946年から1958年にかけて、マーシャル諸島のビキニ、エニウェトクの両環礁で合計67回の核実験を行った。1954年のブラボー実験(水爆実験)では、大量の放射性物質がロンゲラップとウチリック両環礁に降下、両環礁の住民らが被爆した。

 

 これらの放射性汚染のその後の影響について、2019年に米コロンビア大学のMaveric K. I. L. Abella氏らの研究チームが実施した調査(2015~18年)では、ビキニ環礁等の島々では今も、高い濃度の放射性物質が残留していることがわかっている。一部では、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や東京電力福島第一原発事故の放射能汚染地より、1000倍以上も高い濃度も検出されていると報告されている。https://rief-jp.org/ct13/92051

 

 米国とマーシャル諸島共和国がロンゲラップ環礁の住民の再定住のために結んだ覚書では、住民のガンマ線の生涯被ばく量を100ミリウム(1ミリシーベルト)としている。コロンビア大学の調査による同環礁の現在の平均濃度は、この基準を依然、3倍以上も上回っていた。

 

 マーシャル諸島とソロモン諸島との間は、約2200km離れている。しかし、海洋でつながっている。ソロモン諸島での最大級の島であるガダルカナル島は、太平洋戦争の激戦地で、日本兵の死者約2万4000人以上のうち、多くが餓死したことでも知られる。住民の死者も多数出たとされる。

https://media.un.org/en/asset/k1w/k1w5nfk0yd