HOME13 原発 |虚飾の五輪 嘘が嘘を呼ぶ (古賀ブログ) すでに「言い訳」も用意(?) 「完全ブロック」は汚染水ではなく、汚染水の「影響」と・・・ |

虚飾の五輪 嘘が嘘を呼ぶ (古賀ブログ) すでに「言い訳」も用意(?) 「完全ブロック」は汚染水ではなく、汚染水の「影響」と・・・

2013-09-13 18:02:51

kogashigeakiimages
kogashigeakiimages2020年のオリンピックの東京開催が決まった。安倍総理は、ブエノスアイレスのIOC総会で、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題について、「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御さ

れています」「東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」「汚染水の影響は……完全にブロックされています」と大見得を切った。

 

ロイターは、安倍総理のスピーチが東京招致を決定付けたと賞賛した。しかし、世界中が注目する中で、これほどの嘘がまかり通ったことがあるだろうか。

 

9月3日に国費投入を正式に決めた日にも、安倍総理は、「国が前面に出る」と述べて、いかにも自分たちが責任を持って汚染水を止めるかのような発言をしている。これも壮大なるパフォーマンスだ。

 

テレビや新聞では、安倍総理の発言が本当でなくても、結果的には汚染水対策が国際公約になったことにより、対策が進捗するからよかったのではないかというようなコメントが溢れていた。

 

しかし、これまでの経緯が教えてくれるのは、1つ嘘をつくと、それを守るために永遠に嘘を重ねなければならないということだ。何故なら、今のまま、水で冷やす仕組みを続ける限り汚染水問題に解がないことは誰もが認めていて、単に「やる気」を出せば事がすむというものではないからだ。できないことを「できる」と言った、そのツケはこんなにも大きかったのかと後悔する時がくるだろう。

 

これから起きるのは、最初の嘘を守るため、汚染が出ないようなところを選んでの調査、様々な情報の隠蔽、発表先送り、情報歪曲などである。どうしても、総理が嘘をついたことは認めたくない。だから、少しくらい嘘をつくのは止む

を得ないという悪魔のささやきが関係者を「嘘の連鎖」の道に引き込んでいくのだ。

 

「子どもたちに夢を」と安倍政権は言うが、「嘘つきは泥棒の始まり」と子どもたちに言われたらどう返答するのだろうか。

 

 

■「汚染水」ではなく「汚染水の影響」

 

安倍総理のスピーチは、嘘だと言ったが、それは、我々国民の立場で考えた場合のことだ。しかし、これが、霞が関と永田町の常識では「嘘ではない」ということになる。

 

既に指摘されていることだが、そのキーワードが「影響」という言葉だ。安倍総理が、「汚染水はブロックされている」と言ったのなら、それは、明らかに嘘になる。原発の港湾内の水は1日に50%も入れ替わっているし、二重構造になっている港湾の一番内側とその1つ外側の間にはフェンスがあるのだが、そこからも放射性物質は流出している。

 

また、汚染水タンクから漏れ出した水の一部は、排水路を通って、直接湾外に流出した可能性が高い。いずれにしても港湾の内部に完全にブロックされているとは言えないのだ。

しかし、あの断定的な演説を聴いた人は、安倍総理は、汚染水が完全にブロックされていると言った、という印象を受けた人が大部分だったのではないか。

ここが、あのスピーチのトリックだ。汚染水ではなくて、その「影響」ですよということをわかりやすく言うとさまざまな疑問が湧いてくるのだが、それを遮断するために、あえて、「完全に」という言葉を使った。あの一言で、「一滴たりとも」汚染水は漏らしていないという感じを出したのだ。

 

 

■想定問答は10ページ?

 

スピーチに続いて質疑がある場合は、必ず、官僚が想定問答を作る。今回は、何回もやり取りが続くことはなかったので、それほどの細かいものは必要なかったが、それでも、汚染水対策で何故影響はないといえるのかという想定問答

は作られていただろう。

 

例えば、福島沖で汚染された魚が捕獲されているではないか、という問いに対して、「それは、汚染水の影響ではなく、3.11の事故直後に放出された放射能によるものだ。私が言ったのは汚染水のことだ」とか、「港湾外に汚染水が漏

れているということは、影響があるということではないのか」という問いに対しては、「湾外で採取された海水の放射能の数値は、健康に害をおよぼす怖れがあるとされる国際基準よりはるかに低く、影響はないといってよい」という具合だ。

 

もし、これに対して、官僚が反論を試みる場合は、「影響の定義如何」というところから始まる。「影響」の定義を言わないで、「それは全くない」と言い切ることは極めてアンフェアだ。汚染水が漏れ出ていれば、仮に影響が小さいにしても全くゼロだということはありえないし、漁業の操業試験が中止されたのは、「影響がある」と考えたから中止されたということを示している。いずれにしても、会議は終わってしまったから、今後は国会などでその議論がなされることになるだろう。

 

なお、「完全にブロック」というフレーズの「完全」という言葉は、普通は官僚は使わない。世の中に100%ということはない、というのが霞が関の常識だ。だから、完全という言葉を軽々に使うのは、「頭の悪い」証拠だとみなされる。おそらく、現場で、政治家または民間のコンサルの判断で使われた言葉ではないかと推測するのが妥当だろう。