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福島原発遮水壁 事故後3カ月に着手計画 公表寸前で東電が「待った」 経産省も対応せず 当時原発担当首相補佐官の馬渕澄夫議員明かす

2013-09-17 13:48:04

馬渕澄夫衆院議員
馬渕澄夫衆院議員
馬渕澄夫衆院議員


日本経済新聞によると、現在、東電福島第一原発の最大懸念材料となっている汚染水問題に絡んで、一昨年3月の原発事故から3カ月後に、原発建屋への地下水流入を防ぐ遮水壁建設を発表する予定だったが東電の「待った」で中断したことが、当時首相補産官を務めていた民主党の馬渕澄夫衆院議員の発言で分かった。

 

馬渕氏の発言は日本経済新聞のインタビュー記事で紹介されている。それによると、原発建屋を覆う遮水壁を建設する案を検討した結果、「鉛直バリアー」方式の採用を決め、米原子力規制委員会(NRC)の協力も得ていた。当時、政府・東電で対応していた統合本部でも設置方針が固まり、11年6月14日に記者発表する予定だったが、馬渕氏によると「その前日に、東電の武藤栄副社長(当時)が、『(遮水壁設置によって東電が)債務超過に追い込まれると市場が評価する可能性があるので、決定というのは待ってほしい』と当時の経産相に言いに行った」という。

馬渕氏は「武藤さんには、いずれ遮水壁を作ることは変わらないということを確認した。武藤さんは私に『遅滞なく進める』と約束した」と付け加えた。

当時の経産相は海江田万里氏(現民主党代表)。海江田氏は同じくインタビューで次のように語っている。「「私は作ってもらいたいと思っていた。ただ遮水壁にはお金がかかるのも確か。事故の責任が東電にあるといった場合、たとえば1千億円がかかれば、東電に債務をたてなきゃいけない。そうすると6月の株主総会が乗り切れるのか」

「東電が債務超過になるということは、あの時点で法的処理をするということ。そうすれば炉の冷却作業ができなくなり、着のみ着のまま避難している原発周辺の住民への損害賠償もできなくなる。東電の破綻はダメだった。僕はその判断は間違っていないと思う」と説明している。

実は、この時の判断が間違っていたのだ。東電は当時も今も、事実上破綻状態なのに、政府は破綻処理後の賠償責任、事故処理責任を東電に代わって国が負うことを嫌い、「死に体」の東電を支えて今日に至っている。

東電が「先のない会社」であることは、現在、東電に在籍している社員たちが一番よくわかっているのではないか。日々、積み上がる賠償責任、自分たちの技術力を圧倒的に上回る事故処理の難しさ。そうした展望のない環境の中で、形だけは上場企業を維持していても、住民や社会に対して放射能汚染の拡散を防ごうという意欲が、東電経営者や社員の心に高まるだろうか。あの広瀬社長の慇懃無礼な態度からは、むなしさだけしか感じられない。

馬渕氏も海江田氏も、担当を外れる際、遮水壁設置問題を後任に引き継いだ、と説明する。だが遮水壁設置案は闇に葬られた。馬渕氏は「後任に引き継いだ。その後は、ただの与党議員になると、情報は入ってこなくなる。しかし、まさかひっくり返るとは思わなかった」


 ――どうしてひっくり返ったのだと思いますか。




 「東電の言いなりになっていたのだろう。その意味で、11年12月に野田政権が原発事故の収束宣言をしたのは許し難い。首相、政権が東電、経産省、エネルギー族などに言いくるめられたのだろう。発足から8カ月も問題をほったらかしにしていた安倍政権も同じだけど」

政権交代で政治家は責任の座からはずれる。一貫して原子力行政を担っている経済産業省の官僚たちによる“怠慢の責任”は、とてつもなく大きい。

 

 


馬渕澄夫氏インタビュー:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF16005_W3A910C1000000/

海江田万里氏インタビュー:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1600J_W3A910C1000000/