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汚染水処理への国費投入の法的根拠を問う (玉木ブログ)

2013-09-19 21:33:43

玉木雄一郎議員
 

玉木雄一郎議員
玉木雄一郎議員


福島第一原発の汚染水処理の問題は、オリンピック招致決定の際にも話題となるなど、国内外の関心は益々高まってきている。この問題に対し、安倍政権は、予備費の活用も含め470億円の国費を投入し、積極的に取り組む姿勢を見せている。

 

 

福島第一原発の事故処理については、被害者への賠償も含め、国がより主体的な責任と役割を担うべきであり、政府の積極姿勢には賛同する。しかし、今回の470億円の国費支出については、その法的根拠があいまいであり素直に賛同することができない。あえて問題を提起したい。

 

 

そもそも、上場会社たる東京電力の汚染水処理対策費を、国費で賄う法的根拠はどこにあるのか。

 

 

原子力災害の被害者に対する賠償金が不足するなら、原子力損害賠償機構法(以下「機構法」という。)に基づき交付国債を換金して調達できる。しかし、汚染水処理や廃炉その他の事故処理等に必要な資金については、原則、東電が自ら借り入れを行うなどして調達し、国は政府保証を付すなど、間接的な調達支援を行う仕組みになっている。東電が上場企業であることを考えれば、自ら資金調達するのは当然だとも言える。

 

 

そして、それら対策費用は電気料金の値上げ申請を通じて、国(経済産業大臣)の承認のもと最終的に電気料金に転嫁され、電気利用者の負担で賄われる。これが現在のスキームの基本的枠組みだ。

 

 

しかし、今回、いきなり国費(税金)が投入されている。

 

 

ここで、誤解して欲しくないのは、私は国費投入に反対しているわけではない。私は、上場会社である東電に、電力の安定供給も、賠償も、事故対策も一義的な責任をすべて負わせている現在のスキームそのものに根源的な無理があり、その結果、法的根拠があいまいなまま、上場会社に国費を投入せざるをえなくなっている事態に疑問を呈しているのである。端的に言えば、現在のスキームは事実上破たんしているのではないかという疑問である。

 

 

明確な基準もなく、上場会社に国費を投入することを安易すべきではないし、また、東電の負担で対応すべき事故処理費用の一部を国が肩代わりすることで、本来ならもっと「高くつく」はずの電気料金が、国費をつかって安く抑えられることも問題である。

 

 

私は、現在の支援スキームの限界が顕在化した今こそ、賠償、支援の仕組みを抜本的に見直すことを提案したい。例えば、現在の東電を、電力の安定供給を担う発電会社と、賠償、事故処理を担う処理会社に分割し、後者については、国が直接関与するといった見直しを大胆に行うべきである。事故発生当時から本ブログでも主張し続けてきたように、プレパッケージ型の破たん処理は、いまだに有力な選択肢の一つだと考える。

 

 

とにかく、まずは東電と国の責任と役割の分担を明確にすることが先決だ。無理に現行スキームを維持しようとして、円滑な賠償や事故処理が遅れるようなことがあってはならない。具体的な懸念を一つ述べておきたい。

 

 

今回の国費投入の基準は「技術的難易度が高い技術」とされているが、問題がある。つまり、こうした基準を国が示したことで、東電からすれば、「技術的難易度が高い」処理方法を選んだ方が、国費で面倒をみてくれることになるため、会社の財務状況を改善させようと思えば、無理にでも技術的難易度の高い方法を採用するインセンティブが働く。

 

 

例えば、汚染水の流入防止には、山側に鋼鉄製の矢板を打ち込む方法が最も止水効果を発揮すると考えるが、こうした手法は必ずしも技術的難易度の高いものとは言えず、国費のサポートが受けられない可能性が高い。その結果、仮に効果のある手法だとしても退けられてしまう可能性がある。つまり、効果があるかどうかではなく、国費を出してもらえるかどうかが、対応策選択の際の第一の基準となってしまう。

 

 

繰り返しになるが、私は、国費の投入には反対しない。ただ、それが明確な法的根拠に基づき堂々と行える新たなスキームを一刻も早く作るべきである。現在のスキームのまま無理を重ねれば、上記のような“歪んだインセンティブ”が生まれ、本来行うべき対応策が採用されない可能性さえ出てくる。

 

 

中途半端な国費投入でお茶を濁し、本質的問題をうやむやにしてはならない。今こそ、機構法の見直しを含む、事故対策の抜本的見直しを行うべきである。そして、それはスキーム策定当時与党だった民主党自身が向き合わなければならない宿題でもある。

http://ameblo.jp/tamakiyuichiro/entry-11616630298.html