HOME |日本原子力学会が「行動指針改定案」開示 「信頼性醸成」「社会に役立つ原子力技術の追求」「国際的な活動」の3本柱(FGW) |

日本原子力学会が「行動指針改定案」開示 「信頼性醸成」「社会に役立つ原子力技術の追求」「国際的な活動」の3本柱(FGW)

2014-03-24 18:57:42

gensiryokugakkailogo_aesj
gensiryokugakkailogo_aesj原子力分野の研究者で構成する日本原子力学会は、東京電力福島第一原発事故を受けて、学会としての行動指針を全面改訂する新指針案をまとめ、公開した。

 

同学会は福島事故後、学会の定款を改定し、その目的を「公衆の安全をすべてに優先させる」とした。そのうえで「原子力および放射線の平和利用に関する学術および技術の進歩」と「その成果の活用と普及」を進め、それによって「環境の保全と社会の発展に寄与する」と位置づけた。

ところが行動指針は、従来のままで、「原子力の平和利用」を最優先に掲げ、専門性の強調と、学会を社会に対して「上位」に位置づけた内容になっていた。今回の行動指針の修正案は、事故の反省に立って、こうした「上から目線」の文言を極力排除し、「信頼醸成への貢献」を3本柱の最初に強調している。原発事故によって専門家による「安全性の確保」がまったく機能しなかったことへの反省といえる。

特に、学会と特定の原子力企業群、それに経済産業省等の一部原発官庁と原子力議員だけで構成してきた「原子力ムラ」への不信感が、国内だけでなく、海外からも高まったことを踏まえて、「安全性向上を追求する」という決意表明に続いて、「高い倫理観を醸成する」「公平公正を旨とし、透明性を維持する」という2点をあげている。これらの文言は、学会自体に向けられた不信感を払拭するために盛り込まれたと考えられる。

原発事故への反省に立脚しているとはいえ、基本は原子力技術の利用促進を踏まえている点は、従来の行動指針と変わりはない。「社会に役立つ原子力技術の追求」では、原子力技術の活用と普及を通じて、地球環境の保全、人類の持続的発展に寄与する、としているが、原発による事故リスク、廃棄物処分等の福島事故で顕在化した問題への対応を技術的にどうするのかという「指針」は見当たらない。

「国際的な活動」では福島事故を踏まえて「原子力事故の当事国となった経験に基づき」と、一応、事故を踏まえた形にはなっている。ただ、トルコ等への原子力輸出に対して学会がどう公平公正な意見を表明していくのかという具体的な展開については、案だけでは決意も方向性も伝わってこない。

同学会は今回公開した指針案について、来月25日までに、学会員からの意見を募集し、最終集約するという。

 

行動指針改定案(日本原子力学会)

1.  信頼醸成への貢献

1.1 弛まず安全性の向上を追求する。

1.2 高い倫理観を醸成する。

1.3 公平公正を旨とし、透明性を維持する。

1.4 国民・地域社会から信頼される技術情報源となるよう努める。

2.  社会に役立つ原子力技術の追求

2.1 広く国内外の知見・経験に学び、学術および技術の向上を主導する。

2.2 研究開発成果の活用と普及を進め、地球環境の保全、人類社会の

持続的発展に寄与する。

2.3 世代の研究者・技術者を育成・支援し、技術の継承を図る。

3.  国際的な活動

3.1 原子力平和利用の豊富な実績と、原子力事故の当事国となった経験に

基づき、世界の原子力技術とその安全性の向上に貢献する。

3.2 我が国の原子力平和利用と核セキュリティに対する国際的信頼の向上に努める。

http://www.aesj.or.jp/information/koudoushishinkaitei2014.html