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茨城県、日本原電の東海第二原発広域避難計画で県外避難先未定のまま最終案提示。福島を避難先にもできず、実効性に課題山積(茨城新聞)

2015-02-08 22:24:56

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広域避難計画について議論した原子力災害対策検討部会=茨城県庁
広域避難計画について議論した原子力災害対策検討部会=茨城県庁


日本原子力発電東海第2原発(東海村白方)の事故に備えた広域避難計画策定で、茨城県は6日、計画の最終案を茨城県地域防災計画改定委員会原子力災害対策検討部会に示した。

前回までにまとめた避難経路や茨城県内の避難先市町村をあらためて示し、事故時の広報態勢などを見直した案を提示した。しかし、県外の避難先市町村や放射性物質の付着を調べる検査態勢は未定のままで、計画の実効性には多くの課題が残されているのが実情だ。

最終案では、原発から30キロ圏に位置する14市町村の避難経路などをあらためて示したが、約96万人のうち福島や栃木など隣接5県に逃げる約52万人分の県外の避難先市町村は盛り込まれなかった。このため、茨城県は5県との協議を急ぐ考え。

原則として5キロ圏は自宅や学校などの滞在場所から即時避難し、30キロ圏は自宅で屋内退避した上で、その後の指示を待って避難する計画。避難方法は、高速道路や幹線道路を使って逃げる従来の方針を示した。ただ、地震など複合災害は想定しておらず、検討部会の委員は「他県への避難が主要避難先になることも考えて、何らかの計画を作っておくべき」と指摘。県も第2の避難先確保を課題に挙げた。

前回の検討部会の意見を踏まえ、県は原発の外部電源喪失や放射性物質放出など事故の段階に応じて住民に情報提供していく方針を提示。委員からは「SNSなどの民間情報サービスの活用も不可欠だ」といった提案もあった。

30キロ圏の病院や社会福祉施設に約1万8千人の入院患者・入所者がいる中で、こうした要配慮者の避難については県と市町村が施設管理者と連携していくことを計画に追加。ただ、大量の車両や付添人の確保など具体的な支援策はほぼ手つかずで、今後も難航が予想される。

甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素材の配布は5キロ圏の住民には事前配布するが、対象人数が多い30キロ圏の住民に対して緊急時にどう配るかも未定のまま。放射性物質の付着を調べるスクリーニング検査についても、国の方針が定まっていないこともあり、具体的な手順や場所は決まっていない。

県は今後、各委員の意見を踏まえて計画を正式にまとめ、3月に予定されている県防災会議に報告する。検討部会委員長の藤城俊夫・高度情報科学技術研究機構参与は「各委員の意見を踏まえ、実効性のある計画にしてほしい」と述べた。

広域避難計画は、30キロ圏内に義務づけられた市町村計画のガイドラインとなるもの。委員の一人で東海村の山田修村長は「県計画通りの避難は難しいかもしれないので、村民と意見を交わしながら実効性を詰めていきたい」と述べ、来年度中の村計画の策定を目指す考えを示した。 (戸島大樹)

 

http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14232377708023